何故、個別的自衛権は合憲で、集団的自衛権は違憲なのか?
- 2015/8/6
- 政治
- 5 comments
日本国憲法における武力行使は、まず第一に憲法9条1項で戦争・武力行使が禁じられ、9条2項では「軍」の編成と「戦力」不保持が規定されています。このため、外国政府への武力行使は原則として違憲であり、例外的に外国政府への武力行使をしようとするなら、9条の例外を認めるための根拠となる規定を示す必要があります。
そして、そのような武力行使の例外として憲法13条は「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」は「国政の上で、最大の尊重を必要とする」と、定めています。また、条文に最大の尊重とあるために、9条との兼ね合いにおいては、この13条が優位になります。ですので、政府には、「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」を保証するために国内の安全を確保する義務が課されているのです。また、国内の主権を維持する活動は防衛「行政」であり、内閣の持つ行政権(憲法65条、73条)の範囲と説明することもできます。とすれば、自衛のための必要最小限度の実力行使は、9条の例外として許容されるでしょう。
これが、従来の自衛隊の創設以来変わることのない政府見解です。
(防衛省HP『憲法と自衛権』
http://www.mod.go.jp/j/approach/agenda/seisaku/kihon02.html より)
一方で、「外国を防衛する義務」あるいは権利を政府に課す規定は、どこにも存在しません。
また、外国の防衛を援助するための武力行使は、「防衛行政」や「外交協力」の範囲には含まれず、「軍事」活動になるでしょう。ところが、政府の権限を列挙した憲法73条には、「行政」と「外交」の権限があるだけで「軍事」の規定がないのです。ですので政府が集団的自衛権を行使するのは、憲法で附与されていない軍事権の行使となり、越権行為になります。よって、日本国憲法の下では、自衛隊が外国の政府との関係でなしうる活動は、防衛行政としての個別的自衛権の行使と、外交協力として専門技術者として派遣されるPKO活動などに限定せざるを得ないのです。
特に、13条では「国民の」生命自由、幸福追求の権利を規定しているので、ここから、外国(あるいは外国人)を守るための集団的自衛権の行使容認が導かれないというのは妥当な解釈でしょう。
つまり、現在の憲法において集団的自衛権を行使するためには、二つのハードルが存在しており、一つは憲法9条によって、集団的自衛権の行使が禁じられていないことを明示する必用があること、そして、もう一つは、憲法により集団的自衛権の行使を認める根拠を見出すことです。立憲主義においては、重要な国家権力の行使は法律による裏付けが必要であると考えられているので、実は、よく合憲派が主張する「憲法で、明示的に集団的自衛権の行使を禁止している条文は存在しないから、集団的自衛権は合憲として認められる!!」というロジックは(憲法から集団的自衛権の行使を認める根拠を見出すという作業が欠落しているため)そもそも成り立たないのです。
現在、集団的自衛権や安保法制に関する議論は非常に混乱していますので、少しでも論点を整理できるように思って書かせてもらいました。集団的自衛権や安保法制に関しては、仮に賛成であろうと反対であろうと、このような基本的な認識を踏まえたうえで議論していただければと思います。
2
コメント
この記事へのトラックバックはありません。
そしたら個別的自衛権もだよね。どこにも個別的自衛権が行使できるとは書いてないよ?
13条は集団的自衛権にも適応されてしまうし。
この筆者は集団的自衛権、個別的自衛権双方が行使できないという考えなのか。
憲法解釈的には筋が通っているね。
だけど、アメリカでさえ集団的自衛権を行使できるとは憲法に書いてなかったんじゃなかったけ?