戦う国家公務員・国公労連 『ハケン女性をオルグせよ!』

「憲法守る戦い」

「皆さん、この戦いは憲法を守る戦いです。私たち公務員労働者は、憲法第九十九条で憲法を尊重・擁護する義務があります。ですから、憲法違反の法案を見過ごしにすることはできません!」 動画でこう呼びかけるのは、国公労連(日本国家公務員労働連合会)の鎌田一書記長だ。「公務員の政治的中立性」などどこ吹く風で、「学び、伝え、行動する。各地で開かれている(安保法制)反対運動に参加していただきたい」と訴える。

「大きな声では言えませんが、・戦争法案・やアベノミクスにおける格差拡大のおかげで、右肩下がりだった組合員が持ち直してきている。原発問題も重要なファクターです。また、現在、国公労連の『躍進』に大きく貢献しているのは、女性の非正規職員の方々です」(組合関係者)

 
 国公労連の歴史は古い。終戦直後に官公庁で次々と結成された労働組合が様々に形を変え、一九七五年に国家公務員労働組合共闘会議が発展して結成された。国家公務員や独立行政法人の職員などで組織する労働組合で、組合員数は公称で約七万人。日本共産党を下支えする労働組合として認識されている。 二〇一〇年には、枝野幸男民主党幹事長(当時)がテレビ番組で「国家公務員の労働組合が支持しているのは共産党」と述べて、共産党から猛反発を受けた。国公労連も「結成以来、一貫して組合員一人ひとりの『思想・信条の自由』と『政党支持と政治活動の自由』を保証する方針を堅持してきた」と抗議している。
 
 だが少なくとも国公労連については、実態は共産党の下部組織と言って差し支えない。「しんぶん赤旗」でも、国公労連の「たたかい」が連日、紹介されている。

 当然、港区西新橋にある本部職員は共産党員ばかりだ。ここで受ける職員(=共産党の人々)の印象はすこぶるいい。ブルジョワ・高飛車な香りは全くせず、年齢が若い人や女性ほど真面目で純朴で、笑みを絶やさない。私が過去に取材などで訪問した時にいつも感じたのは、彼らの「質素で和やか」な雰囲気と掲げる主張の激しさとの乖離であったことを思い出す。

 久方ぶりに「国公労連」のHPを開いてみると、共産党のHP同様に女性や若者を意識したかのようなカラフルなイラスト。サイトから見ることのできる組合紹介のパンフレットは労働組合らしからぬ、親しみやすいイラストを使用。そしていま、党同様に「国公労連」を活気づかせているのが女性のパワーだということは、ピンク色の「国交女性協」と張られたバナーからも窺える。

「女性協ニュース」二百六十三号をPDFで開くと国花の桜の花があしらわれており、内容の激しさとのギャップに違和感を抱いてしまう。
 この号では、「この職場には民主主義はない」と上司から言われたというある職場の事例を紹介。組合員が仮眠用の新しい布団をゲットする職場改善を勝ち取り、「これによって組合加入を検討してくれる仲間が誕生した」と誇らしげだ。

ハケン女性がターゲット

 
 共産党関係者はこう述べる。

「国公労連の組合員数は、基本的に減少の一途ですが、非常勤職員さん、派遣さんたちのおかげで盛り返しが見られる。ほとんどが女性であることは言うまでもありません。
 雇用期間が三年から五年に延びたことや、彼女たちの多くが正規職員化を望んでいることから、今後、彼女たちは重要な戦力になるだけではなく、拡大路線の軸になると踏んでいるからです」

 だが、ここまでの道のりは実に厳しかった。国公労連の加盟単位組合として国家公務員一般労働組合(国交一般)が結成されたのは、〇三年のこと。霞ヶ関の本府省を中心に、増大する非常勤職員や派遣等の非正規国公労働者を組織化することを意図してできたという。
 ちょうど国公一般が組織化された〇三年以降、民主党政権時代までに入ってきた非常勤職員は、ハローワークなどで応募してきたという人が少なくない。地味で、地方出身の就職が難しかった学生という印象が強かったように思う。彼女たちの多くは「霞ヶ関の雰囲気に馴染めず」、三年で職場を去り、転職していくというケースが多かった。

 また、かつての非常勤職員は、課長の妻の大学の後輩などに声がかかることが多く、彼女たちは「花嫁候補」として、職場ではコピー取りやお茶汲みをしている程度だった。出身大学も聖心や東洋英和などが中心で、外見も見目麗しい女性ばかりだった。
 そして非常勤や派遣の人材向上や確保の必要性が上がり、非常勤職員の質が変わってきた。

 ところが、「非常勤でも縁故採用は中止」という事態に追い込まれたことや、非常勤職員の職域が広がったことなどで事情が変わったのだ。
 昔でいう、国家公務員・種の人が担っていた仕事も、非常勤職員が行うようになってきた。単なる事務だけでなく、秘書的な役割や若手の補助的な仕事など、非常勤に求められる能力が高くなったのだ。
 そこで、派遣さんも登場するようになる。会社から派遣されてくるので、その人のスキルなどには問題はまずない。もともとそれなりの企業で働いていた人が結婚や出産、離婚などで派遣会社に登録しているケースも多い。

 必然、いまの霞ヶ関には、一流私大など高学歴系の非常勤職員がたくさんいる。華やかさという意味では以前とだいぶ様変わりしたが、一般的には高学歴女子がごろごろしている。元女子アナという逸材もいた。

→ 次ページ「霞ヶ関型階級社会に不満」を読む

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西部邁

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