もう一つの見えない戦争ー間接侵略とはなにかー

スパイとは何か

スパイは大きく2つに分けることが出来ます。工作統括官と協力者です。

工作統括官とは、任務遂行のために黒幕国家から派遣された現地の指揮官であり、1人以上の本国から派遣されたスパイや現地協力者を使います。
多くの場合、外交官・商社員・ジャーナリスト・教員などの偽装身分を名乗っています。

協力者とは、現地人協力者のことで工作活動の補助を担います。そして、協力者の中には自分がスパイ組織に利用されているという自覚を持たないケースもあります。自分を愛国者だと自認し国家のためにと思って行っていることが実は黒幕国家の意に沿ったことだという事です。

例えば、陸軍皇道派による二・二六事件はその最たるもので、本人たちは真面目に日本を思ってのことだったのでしょうが、その実情は天皇を利用した共産革命でしかありませんでした。

二・二六事件を間接侵略で考えるときには、実際に行動を起こした皇道派の人間そのものよりも、何者がそれに対して共産思想を吹き込んだのかという事を考えなければなりません。
例えば、その後のゾルゲ事件、企画院事件、満鉄調査部事件などとは無関係だったのか、など考えるべきことは多岐にわたります。

間接侵略が黒幕国家の意思が存在する以上、必ず本国から派遣された工作統括官が存在します。間接侵略だという確たる証拠をつかむのはこの工作統括官を特定することが肝心だと言えます。

この間接侵略を防ぐ方法としてスパイだということが露見すると(普通の国では)逮捕され、相当年数(執行猶予の付かない最低3年以上)の懲役刑となることで世間と隔絶させることでスパイとして使い物にならなくさせます。
また、新任の工作統括官は現地協力者からすぐには信用されないので工作活動をすぐに再開することが出来なくなるのです。

以上のように外交も武力紛争も間接侵略も全てはある国家の意図を叶えるために行われる行為なのです。
情報が氾濫していようが少なかろうが、何者かの意図があるかもしれないという点を意識してオシントを駆使していけば表層的には見えてこなかった事実が理解できるようになるかもしれません。

多くの日本人が世の中のインフォメーション情報から知見を生み出すインテリジェンスの能力を身につけることが出来れば、ある国からの間接侵略の意図を見抜くことが出来るようになります。
そして、謀略が周知の事実となったとき、その効果は失われます。

つまり、間接侵略に打ち勝つにはインテリジェンスが必要不可欠と言えます。

なお、本稿は倉山塾「樋口恒晴の安全保障講座」『第6回諜報・防諜―常在戦場』に依拠しています。
倉山塾を主催する倉山満氏と講師の樋口恒晴氏には多くの示唆を与えて頂きましたことをここに感謝致します。
万一、本稿で内容に誤りがあった場合にはひとえに筆者の誤解が原因であり、倉山氏と樋口氏の責任でないことをここに明記しておきます。

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西部邁

南慧介

南慧介フリーライター

投稿者プロフィール

昭和60年生まれ。広島県出身。

主著 :倉山満『軍国主義が日本を救う』(平成26年、徳間書店)
ほか編集協力

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