アップルvs島野さん裁判に感じた日本社会の活力の衰え
- 2016/4/15
- 経営
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一矢報いたとまでは言えない今回の判決
以前、私が本サイトで取り上げた、米国アップル社と西日暮里の島野製作所の法廷闘争の一件について、知人から進展があったようだと教えて貰いました。少し時が経過してしまいましたが、国内の中小企業の今後を占う、大事な指標の一つになりうるかもしれないと思い、筆をとります。
アイフォーンなどを販売する米デジタル家電大手「アップル」に、部品下請け「島野製作所」(東京都荒川区)が約100億円の賠償を求めていた訴訟で、「(両社の)紛争は米国の裁判所で解決する」との合意が有効かどうかについての中間判決が15日、東京地裁で言い渡された。千葉和則裁判長は「両社の合意は、合意が成立する法的条件を満たしておらず無効」と判断、国内で審理することを決めた。国際的な裁判管轄をめぐる企業間合意を無効と判断するのは初めて。今後、企業間の訴訟に影響することも予想される。
(中略)
15日の中間判決で、千葉裁判長は「裁判管轄の合意は、国際事件であれ国内事件であれ、一定の法律関係に基づいた訴えに関して結ばれたものでない限り無効だ。それは片方の当事者が不測の損害を受けることを防ぐためだ」と指摘。「両社の合意は『契約内容との関係の有無などにかかわらず、あらゆる紛争はカリフォルニア州の裁判所が管轄する』としか定められていない」とし、合意は広範すぎるため無効と判断した。
中間判決への異議申し立てはできず、審理は東京地裁で行われることになる。出典:米アップル社のお手盛り契約にNO! 荒川区の下請け部品メーカーの損賠訴訟を東京地裁で審理へ(2016/2/16 産経ニュース)
今回の判決は、企業間契約には必ず盛り込まれている紛争発生時の管轄裁判所に関する記載内容に関して、米国アップル社に対して過度に有利な内容となっている点を指摘、そのような合意は無効であると判断し、今後の裁判が東京地裁で行われることに決定しただけです。他サイトでは島野さんが一矢報いた等と報じているようですが、今回の判決は両社がどの土俵で闘うかをようやく決めたに過ぎないのです。
ただ、今回日本の司法現場が出した判決は、一方に過度に有利な文言が記載されている場合はその内容は無効になるという判例が示されたという点では評価されるべきでしょう。これまで業務上で契約書を締結したことがある方はご存じの通り、契約先との力関係でそこに盛り込まれる文言は自社側に有利になったり、相手側に有利になったりするものです。今回のような紛争管轄裁判所の記載だけでなく、支払サイトの設定や契約解除条項等に特にそのような点が現れます。「ウチはこれじゃないと契約しないから」と高飛車な態度で示された契約書雛形の内容が、当方側に一方的に不利であったりしたご経験がある方も多いのではないでしょうか。
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