本格化しつつある「配偶者控除」見直しの議論について

ベンチャーサポート税理士法人の森です。

さてGW前とGW中の日経新聞に気になる税金のニュースが載ってました。

ご覧になられた方も多いかと思いますが、「配偶者控除」という所得税の控除を見直す検討を本格化したニュースです。いわゆる「103万円の壁」といわれるもので、奥さんがだんなさんの扶養に入るための年収基準が女性の社会進出を拒んでいるから見直しすべき、という議論です。

完全に廃止する案、夫の所得に応じて廃止する案、夫婦の所得で一定額を控除する案、新しく夫婦を対象とした控除を設ける案など、いろいろなパターンが出てきてます。ヨーロッパなどでは夫婦や世帯の所得で控除をするものが一般的になってるそうですね。

私自身、気になっているのは「なぜ、今?」という点です。

この配偶者控除の見直しは、私が記憶してるだけでも10年以上議論されてきてるテーマです。そしてその都度、見送りをされてきました。ここ数年で、消費税の税率10%、相続税の基礎控除の引き下げなど、税収に大きなインパクトを与える税制改正がドンドン出てきています。

そんな中、さらに「実質増税」の配偶者控除の見直しはさすがに急過ぎではないか?というのが私の第一印象でした。

今、政府は平成32年までにプライマリーバランスの黒字化を目標にしてます。
(※プライマリーバランス:税収などの国の歳入と、国債の償還以外の国の歳出とのバランスのこと。企業に例えると、売上で経費を賄って損益計算書を黒字化するということです。)

そしてGW中の5月2日、安倍首相は消費税を10%以上には上げない、プライマリーバランスの黒字化は景気向上による税収の自然増加で賄うと発表しました。2月に発表された内閣府の試算では、GDPの名目成長率が3%でも平成32年には、まだプライマリーバランスは黒字にならないとのこと。

あ、足りないんだな。そこで、女性の社会進出による労働力増加と、所得税の実質増税の一石二鳥を狙える「配偶者控除の見直し」が今、本格化してきたのかな。なんとなく腹落ちをするタイミングでの新聞報道でした。

配偶者控除の見直しは、安倍首相が肝いりで財務省に指示をしたとのことで、年内に具体的な案を作って来年1月の通常国会での成立を目指すとのことです。早ければ2年あとの2017年1月から配偶者控除が見直されることになるかもしれません。

これは経営者にとってもサラリーマンにとっても、全国民に影響が出る大きな税制改正になります。議論の流れをしっかり見ていきたいと思います。

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西部邁

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