積極財政こそが成長戦略
- 2014/6/4
- 経済
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積極財政こそが真の成長戦略
こうした状況を招いたのが、消費税増税を含めた1997年の財政構造改革を起点とする緊縮財政であることは、これまで繰り返し述べた通りです(図5)。したがって、財政支出を持続的に拡大する積極財政に政策方針を転換すれば、財政支出による直接的な効果のみならず、乗数効果も働いて名目GDPが比例的に拡大、利益成長期待が生まれて企業の投資意欲も向上し、前述した悪循環構造も打破できます。
ちなみに、1998~2011年にかけて、サムソン電子の本国韓国における名目GDP、名目政府支出の伸び率は、それぞれ年率で6.6%、7.9%に達しています(同時期の日本はそれぞれ年率-0.7%、-0.3%)。
【図5:各種マクロ経済指標の推移】
その際、国全体として必要な分野の支出額を拡大する、という基本スタンスで臨めば、自ずと当該分野におけるビジネスチャンスを求めて関連投資の意欲が拡大し、国民生活が向上しながら経済も活性化することでしょう。
これに対して、現政権で成長戦略の一環として検討されている法人税減税は、以下の観点で問題があると思います。
まず、均衡財政主義を維持したまま、課税ベースの拡大、あるいは(直接結びつけられてはいないかもしれませんが)消費税増税といった代替措置を前提とした議論がなされていることです。前者については投資が失敗した時のリスクを高め、後者については(前述の恒等式からも明らかなように)そもそも国内での利益成長機会を狭めかねません。
このままではむしろ投資の国外流出を加速する可能性が高く、期待されている海外からの投資流入にもつながらないでしょう。そもそも、海外からの投資が活発化するほど利益成長機会が見いだされるのであれば、その前に国内企業の投資が活発化するはずで、「海外からの投資を呼び込んで経済を活性化する」という考え方自体が現実離れしています。
他方で、万が一目論見通り海外からの投資流入につながったとしても、マクロで見れば利益成長の機会自体は拡がっていません。したがって、上述した電機産業の事例から類推されるように、過去の資産を引きずる国内企業が「相対的に」不利な競争ポジションに置かれることになるでしょう。これもまた、国益に反する結果になります。
ちなみに、仮に法人税減税、あるいは投資減税のような優遇措置を行うのであれば、むしろ「必要な分野」への投資補助金を提供する方が総論としてはベターではないか、と私自身は思います。前述の恒等式でも明らかな通り、「所得のパイ」に直接影響を与えない減税と異なり、補助金は所得のパイ、すなわち企業にとっての利益成長機会を直接拡大することに加え、赤字でそもそも法人税を払っていない、7割の国内企業も恩恵が享受できるからです。
いずれにしても、均衡財政主義の打破と積極財政への転換が、問題解決の大前提であることには変わりありません。このことを今一度強調しておきたいと思います。
↓今回のプレゼンテーション資料をまとめたものです。
積極財政こそが成長戦略.pdf
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