『聖魔書』[3-3] 神話録

 そのため、創造と開闢の“神”を原理的に想定することができる。
 ただし、人間はそのような“神”を、原理的に持つことができない。
 しかし、原理的に不可能なことを心的に持つことが人間には可能である。
 それゆえ、そのような“神”は存在しうる。

 しかし、そのような“神”を心的に持つことを拒否しうることも可能である。

 そして、
 恐るべきことに、
 畏れるべきことに、
 そのような態度は、
 ‘“神”’への信仰と呼ばれうるだろう。
 そうして、無限は、無限に繰り返される。

 これは、新しい神話であり、真なる神話である。
 それゆえ、それはまた、偽なる神話でもありうるだろう。
 それゆえ、それはまた、真偽の神話になりうるだろう。

 真実と虚偽。
 これは、真実と虚偽の物語。
 真実と虚偽の間における神話。

 一なる神の神話は、一なる神への信仰を生む。
 そして、一なる神の神話は、やはり一なる神への不信心をも生む。

 一なる神への信仰と不信心は、
 世界における真実と虚偽を巡り、
 我と汝を繋ぐ“愛”と呼ばれる。

 そして、我と世界を繋ぐ‘“愛”’へと導かれる。

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西部邁

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