『聖魔書』[3-3] 神話録

《神の存在証明》
 神の本質は完全である。これは定義である。
 完全な神は、存在していなければならない。これは定義である。
 故に、神は存在している。
 そして、これらの定義が特定の思考体系で受容されている。
 よって、神の存在は証明されている。

《神の存在未証明》
 神の本質は、完全である。
 完全ならば、現実に存在していなければならない。
 故に、神は現実に存在している。
 しかし、存在は個体の性質ではなく、完全性に寄与しない。
 よって、神の存在は確証されない。

《神の存在非証明》
 神の本質は、完全である。
 完全ならば、存在することが可能でなければならない。
 故に、神の存在は可能である。
 神の本質は、完全にある。
 完全ならば、現実に存在することが可能でなければならない。
 完全ならば、現実に存在しないことが可能でなければならない。
 故に、神は存在し、かつ、存在しない。
 しかし、これは矛盾である。
 よって、神は存在するとも、存在しないとも言えない。

《神の存在不証明》
 神の本質は、完全である。
 完全ならば、存在することが可能でなければならない。
 故に、神の存在は可能である。
 神の本質は、完全にある。
 完全ならば、存在することが可能でなければならない。
 完全ならば、存在しないことが可能でなければならない。
 故に、神は存在し、かつ、存在しない。
 では、この現実世界において、神は存在するか?
 神の本質故に、神が現実に存在する世界は、完全でなければならない。
 この世界は不完全である。
 よって、この現実世界には、神は存在しない。

《神の存在無証明》
 神は現実に存在する、と定義する。
 故に、神は現実に存在している。
 神は現実に存在しない、と定義する。
 故に、神は現実に存在していない。
 神は現実に存在する、と定義する。
 にもかかわらず、‘神’は本当には存在していない。
 神は現実に存在しない、と定義する。
 にもかかわらず、“神”は本当に存在している。

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西部邁

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  1. 2015-11-27

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