南シナ海の米中緊迫、新聞各紙は「大国の思惑」をどう伝えたか?

「航行の自由作戦」

【朝日】は1面トップに加えて、2面の解説記事「時時刻刻」、さらに11面の国際面で周辺国の反応を記し、14面社説の題は「各国共通の利益を守れ」。

1面記事の中には、「中国の今後の出方次第では、緊張がさらに高まる可能性もある」との記述。また、解説的な内容だが、「国際法では領土から12カイリ内が領海とされるが、スビ礁は中国が埋め立てる前は、満潮時に岩が海面下に沈む暗礁だったため、12カイリ内は領海にならない」との記述もある。

解説記事「時時刻刻」の見出しは「米、中国牽制へ強硬策」。中見出しには「度越す主張に挑む」「中国、対抗措置も視野」「日本の連携米は期待」とならび、最後段には「米中、軍高官会議へ」と話し合いのチャンネルが示唆されている。

uttiiの眼

法的な位置づけの整理をする必要があると思う。

今回の米艦船の行動は、形式的には、公海における航行の自由を主張したもの。もともと暗礁で、干潮時にも岩が海上に出ないスビ礁では、人工島になっていても通常、領土主張は認められない。だとすれば「領海」ではないので、12カイリの内側だったとしても「公海」として誰でも通ることができるというわけだ。

だが、アメリカはここで1つ言い訳を用意している。仮にスビ礁が中国の「領土」であったとしても、国旗を掲げて通過するだけなら、「無害通行権」の行使として、事前の許可がなくても通航が認められている。中国は、92年に制定した領海法で、中国領海内を航行するには中国政府の許可が必要と規定しているから、中国としては「不満」を表明せざるを得ないが、それは国際的には通らない。「オタクの領海法は認められないよ」というのが米側の次のメッセージなのだろうが、その論点はまだ浮上させていない。

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西部邁

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  1. 2015-4-24

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