中国がどうやっても外見を美しく保たなければならないわけ

そんな中、うまくいったのは「天候」にあります。CNNによりますと、この軍事パレードのために、北京およびその周辺での自動車走行や工場の操業は一切停止となり、PM2.5による大気汚染は完全に「アンダーコントロール」され、見事な晴天となりました。

この規制で面白いのは、渋滞を引き起こす原因とみられる結婚式のあとの自動車走行や火葬を伴うお葬式、そして花火や爆竹、屋台と、中国の首都北京の暗雲は、実に幅広い要因があることが理解できます。

この中国ならではの大々的な規制を香港の新聞アップルが試算したところ、この「習近平青空大作戦」の経済損失は、日本円にして少なくとも3,800億円に上るそうで、北京市中心部の飲食店だけでも営業停止による損失は200億円に達したと報道されました。

また現在、中国では水面下の政治抗争が悪化しており、それに伴って不明な爆発事故が相次いでいます。一方、爆発事故で死亡した消防士や市民の 賠償金の金額をめぐり、遺族と当局の交渉も難航しています。これはいまの中国の危機的現状を物語っており、どうやっても外見を美しく保つ必要があります。それほど、中国内部で危機が続いているとみて間違いありません。

その上、北京の晴れ晴れとした晴天=「習近平青空大作戦」の数日後には、再び「北京グレー」となり暗雲立ち込めることになりました。パレードの翌日操業解除された工場から次々と黒煙が立ち上がり、わずか半日でPM2.5は7倍の数値を記録したのです。

中国政府は大気汚染そのものではなく批判に神経をとがらせており、中国版ツイッターの新浪微博(ウェイボー)を検索したところ、出てきた投稿は3件のみだったと、CNNが報じています。

今回のパレードのための「習近平青空大作戦」の前には、通称「APECブルー」がありました。昨年11月に北京でAPEC(アジア太平洋経済協力会議)が行われた際の2週間、大気汚染は完全に「アンダーコントロール」され、見事な青空が実現したことを「APECブルー」と呼んでいましたが、APECが終わるとすぐに煙まみれの空が戻ってきたため、中国では、すぐに消え去ってしまう美しい ものを指す言葉として「APECブルー」が使われ始めた、とCNNは結んでいます。

現在、暴落を続ける株式市場や内紛を、中国政府は「アンダーコントロール」できるのか? それとも、中国の発展そのものが「APECブルー」であり、このあと暗雲立ち込めるのか? いま短期ではなく、中長期的な「晴天」が求められているのは間違いありませんが、その術は見つかってないように思います。

高城未来研究所「Future Report」』より一部抜粋

著者/高城剛(作家/クリエイティブ・ディレクター)
1964年生まれ。現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。毎週2通に渡るメルマガは、注目ガジェットや海外移住のヒント、マクロビの始め方や読者の質問に懇切丁寧に答えるQ&Aコーナーなど「今知りたいこと」を網羅する。
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