【書評】世界を制した「数独」の知られざる誕生ストーリー
- 2015/8/21
- 経営
- まぐまぐニュース!
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数字は独身に限る?
日本発のパズルゲームとして世界的大ヒットを飛ばした「数独(すうどく)」。無料メルマガ『ビジネス発想源』の著者・弘中勝さんがこの数独の誕生秘話と大ヒットした理由を紹介しています。企画作りに頭を悩ませている人は、参考になるのでは?
ユーザーを巻き込む企画
最近読んだ本の内容からの話。
1980年、印刷会社の営業として働いていた28歳の鍛治真起氏は、幼馴染の女性から、「こういう雑誌、日本にないから出したら面白いかも」と、アメリカ土産でもらったパズル雑誌を見せられた。当時の日本でパズルといえば、雑誌や新聞に少し掲載されるクロスワードや多胡輝の「頭の体操」シリーズのようなクイズ本に近いものしかなかった。
アメリカで人気があると言っても、日本でウケるとは限らないから、鍛治氏には最初はピンと来なかったが、1年ほど書店をチェックして回ってみると、日本ではパズル雑誌が創刊されてこない。
まだ誰も開拓していない未知のジャンルだから、鍛治氏は「これはいけるかもしれない」と思った。そこで、パズルや迷路が作れるその幼馴染の姉妹と『パズル通信ニコリ』という、今でいう同人誌をお互いの本業の合間を縫って制作することにした。
当初は3~4ヶ月に1冊ずつ出すペースで、地道に書店に営業活動をしてみると、10軒に1軒ぐらいは面白がって取引をしてくれる書店があり、毎号しっかりと完売するし、号を重ねるうちに部数が倍々に伸びていった。各自治に読者がいる手応えを感じた鍛治氏は、きちんと法人化しようと決めて、印刷会社を辞めて株式会社ニコリを作った。
1984年、鍛治氏が米国デル社のパズルマガジンを偶然に見つけてふと手に取ると、枠の中に数字を書き込んでいくというルールの「ナンバープレイス」というパズルが載っていた。
英語が分からないのでクロスワードは解けなかったが、ナンバープレイスはなんとなく数字を書き込むと解けてしまって、何問かやるとなかなか面白い。
そこで、見よう見まねで作ってみたらできたので、左右対称の配列を残すなどニコリ固有の特徴を入れ、ナンバープレイスとは違う独自の名前をつけることにした。
問題は1から9の一桁数字しか使わないから、一桁はシングル、シングルは独身、そこで「数字は独身に限る」という名前を20秒ぐらいで思いついて、『ニコリ』の別冊に載せた。すると、あっという間に作り手が現れて、『ニコリ』本誌に掲載されると人気に火がつき、読者から続々とたくさんの作品が送られてきた。そのパズルをまとめた単行本を敢行した際に、「数字は独身に限る」を略して「数独」と名付けた。
「数独」だけを載せた単行本は後に26冊、シリーズ累計で450万部以上出るほど人気となった。
さらに、ニコリが始めた「数独」は、2005年にロンドンから突然ブームが沸き起こり、アメリカなど世界中にその人気が広まっていって、「Sudoku」は海外の辞書に載るほどの固有名詞となった。
2007年3月、鍛治氏は「鍛治真起、SUDOKUのゴッドファーザー」というタイトルで、『ニューヨークタイムズ』紙の経済面のトップを飾ることになった。
『ニューヨークタイムズ』紙で、日本人を経済面のトップ記事に取り上げたのは、これが初めてであった。
ニコリの強さは、仲間会社という点にある。
ニコリはパズルが好きだからという人の集まりで、また読者が作家としてパズルをどんどん投稿する。
日本初の総合パズル誌『パズル通信ニコリ』を創刊してからの30年間、濃いファンと文字通り膝を交えて切磋琢磨してきた自負がある、と、ニコリの鍛治真起社長は述べている。
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