楽天の社長である三木谷さんが、以前、こんなことをインタビューで語っていました。
英語とコンピューターの簡単なプログラムが組めることを現代の読み書きそろばんと位置付け、高校や大学の一般教養の必須科目に組み込んではどうか
その言葉が的中したかのように、日本において、小学校からプログラミングが必修科目として取り入れられるようで、今年の4月には、プログラミング教育実践ガイドが文部科学書のHP上で公開されています。
文部科学省が発表した資料ではプログラミング教育のねらいが以下のように表現されています。
初等・中等教育段階でのプログラミング、情報セキュリティ等のIT教育を充実させ、⾼等教育段階では産業界と教育現場との連携の強化を推進し、継続性を持ってIT⼈材を育成していく環境の整備と提供に取り組むむとともに、常に世界最先端の技術や知識の習得を積極的に⽀援する学習環境を整備する。
プログラミング教育の最終的な狙いは、情報セキュリティやイノベーションを牽引して、世界的に誇れる人材を一定数確保することとも読み取れなくもないです。
戦いの舞台は電子空間へ
こう考えると、プログラミング教育の大きな狙いの1つは、近年、電子空間でのサイバー攻撃が活発になってきていることだと推測されます。
2015年の6月、日本年金機構へのサイバー攻撃で年金情報が125万人分流出したのは記憶に新しいところです。
高度にシステム化された現代社会では、このサイバー攻撃がモノやカネの部分にも影響してきます。たとえば、ドイツの鉄鋼工場ではネットワークシステムへのアクセス権が奪われ、溶鉱炉が爆発する惨事にいたったそうです。
また、銀行のATMに感染して、現金の引き落としを自由に行うことを可能にするウィルスも生み出されています。
こういった状況の中で、情報セキュリティを充実するのは喫緊の課題であり、中長期的な目線で、人材を育成することが、小中学生の時点でプログラミング教育を導入していく大きな理由でもあると推察されます。
ただ、少し気をつけなければいけない点があります。
60%はプログラミング教育から落ちこぼれる
ここで興味深い論文を紹介します。
The camel has two humps
日本語に直訳すると、「らくだはこぶを2つ持つ」といった感じでしょうか。
タイトルからは意味がまったくわからないんですが、これは、プログラミングを教育した際に、成績の分布がどうなるかということを分析した論文です。
結論を言えば、ある特徴を持ったグループのみがプログラミングを理解し、好成績を収めるけれども、それ以外のグループは全く成績が伸びる気配がないです。
それが、ちょうど、4:6の割合で、点数の分布がちょうど「らくだのこぶ」のようになっています。
注目したいのは、努力に関係なく、成績のよいグループは成績がよいままで、悪いグループは悪いままでとどまることです。つまり、60%の人々はそもそも、プログラミングに向いておらず、落ちこぼれていくということです。
極端な話、読み書きそろばんのように全体の底上げを目指すよりも、適正を示した40%に特別な教育を施していく方が人材育成という観点からはよいともいえます。
小中学校でのプログラミング教育は人材の掘り起こし
さらに興味深いことに、上の論文にると、IBMがかつて発表したレポートで、大学においてプログラミングを学んだ学生よりも、古典を学んできた学生の方がよい成績を示したことがあったそうです。
誰がどのタイミングでプログラミングの適性を示すかということは意外と誰にもわからないのかもしれません。
小中学校でプログラミングを学習する際、指導者も生徒も「できなきゃいけない」ことではなく、「こういう仕組みで世界は回っているのか」と学び、適性を示した生徒を選抜していて特別コースに取り組ませていくといった、おおらかな心持で取り組んでいく方がよりセキュリティ強化やイノベーションの創出といった点に合致するでしょう。
その上で、プログラミングに適性のある4割を掘り起こし、サイバーセキュリティや新規技術の開発教育施設への道を開くことが、プログラミング教育の理想的な姿であるといえます。
コメント
この記事へのトラックバックはありません。
この記事へのコメントはありません。