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異常な制度に反対の声が上がらないのは1%の富裕層にへつらわねばならぬから
──八方塞がりですね。これにはさすがに反対の声が挙がるのでは?
堤 ところが、反対すべき人たちがいまだにオバマを応援している。
これも非常に恐ろしい構図なのですが、法案を主導したのは医療保険会社や製薬会社のトップ、つまりアメリカの富の四割を握る「一%」のスーパーリッチ(超裕福層)です。
彼らは政治資金や広告費などで、政治もマスコミも買ってしまっている。大企業が社会全体を支配する「コーポラティズム」の構図です。マーケティングとカネの力によって問題の矛先が逸らされ、アメリカ国民は本当の「敵」を見失っている状態です。
オバマが〇八年に大統領になった時、民主党員は歓喜の渦でした。「一つのアメリカ」「チェンジ」と言ったスローガンに、「ブッシュの『暗黒の八年』が終わって、今度こそアメリカを自分たちの手に取り戻せる」と思った。
ところが、アメリカの政治は以前とは大きく変わっていました。民主党だろうが共和党だろうがスポンサーは同じ大企業、「カネの出所は一緒」という状況になったのです。
以前の民主党には労働組合がついていて、「自己責任論」的な成功者の立場を取る共和党と相対していました。
しかし八〇年代以降、国際競争力強化のために企業経済主義に転換し、グローバル化やIT化もあってたしかに企業は大きくなりました。規制緩和も進み、企業はどんどん儲かった。すると企業は「同じ業界のライバル同士で競い合うのはもったいない。より強い企業になるべきだ」と言って合併を進め、中小企業もどんどん吸収していきました。
これによって、企業の寡占化が起こります。どの業界も四~五社を頂点とするピラミッド型になり、トップにはとんでもない報酬が入ってくるようになった。年収三十億円、四十億円が当たり前という「一%」の世界です。
「企業活動で国益に資している」というかもしれませんが、
──むしろ、カネ儲けには国家という枠が邪魔なんでしょうね。
堤 株主至上主義になったアメリカの企業は、とにかく利益を出さなければならなくなり、国内の高い人件費を嫌って海外に出て行くようになった。すると、国内の労働組合は組織率が下がる。これによって民主党のスポンサーがいなくなったのです。
そこで、巨大なピラミッドの頂点にいる企業家は、リスクマネージメントを考えました。より自分たちの業界に都合のいい規制緩和をしてもらうためには民主党にもカネを渡しておいたほうがいいだろう、と。
どちらが勝っても、政治資金の見返りに業界の都合のいい法案を通してくれる。となれば、オバマが民主党だろうがマイノリティだろうが、結局は選挙資金をたくさん出してくれた人たちのいいなりです。
いまアメリカの選挙費用はどんどん高額化していて、先の中間選挙では四千億円の札束が舞いました。相手陣営より多く資金を集めなければ、選挙に勝てない。草の根で千円、二千円を集めてもまるで太刀打ちできず、第三極も出てこられない状況です。
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