TPPでハゲタカが狙う日本の医療

【PR】オトナのマンスリーマガジン「月刊WiLL」は年間購読がお得!

分断工作はうまく行った。合い言葉は「共和党の陰謀だ!」

──歪んだ「二大政党制」ですね。

 アメリカでは大統領選挙や中間選挙を見ても分かるように、選挙となるとまるでスポーツ応援のような盛り上がりぶりですよね。アメリカはほとんどの国民が共和党員か民主党員で、互いに嫌い合っている。ほとんどスポーツと一緒で、熱狂的に自分のチームを応援します。

 それをオバマケアは実にうまく利用しました。共和党嫌いの民主党員、彼らはアメリカでも「弱者」の立場を大事にする人たちで、自身も貧しい人が多い。民主党は支持層のなかでも、プロ市民のような人たちやマイノリティのグループを雇って、オバマケアの支持を呼びかけるよう頼んだんです。
「オバマケアへの批判は共和党の陰謀だ! カネ持ち重視の共和党に潰されていいのか!」

 そう言われると民主党員は当然、「共和党に負けないように頑張ろう」という気になって、オバマケアを宣伝して歩くようになります。オバマの支持者には、教職員組合や労働組合の人も多い。共和党は組合解体を画策してきましたから、当然恨みは深いんですね。共和党憎しが手伝って、民主党を応援する。
「オバマケア、ちょっとおかしいんじゃないか」と言おうものなら、彼らが飛んで行って疑問を芽のうちに潰すんです。「カネ持ちの好きにされていいのか」「共和党の陰謀だ」と。

 このやり方が見事に成功して、いまだに民主党員の多くはオバマケアの問題に気づいていない。むしろいいことだと思っています。最大の理由は、「共和党が反対しているから」

──「〇〇が反対しているからいい法案」。日本でもよく見ますね。

 人を思考停止に陥らせるようなあまりに分かりやすい構図は、「作られたもの」だと思ったほうがいい。中韓の反日もいい例です。

──自国民をも騙してカネを吸い上げるアメリカのコーポラティズムは、孫子の代には祖国が干上がっている可能性を考慮しないのですか。

 恐ろしいことに、株主至上主義が浸透してくると、四半期決算の数字しか見えなくなってしまう。五十年先、百年先のことよりも、「次の四半期でどれだけ利益が出せるか」。四半期利益を出さなければ切られる・雇われCEO・たちには、これが最優先です。

 文化、伝統、教育、共同体、そして何より医療も、バランスシートだけでは価値が図れませんよね。長い投資によって数年後に実を結ぶ事業もある。しかしその「大切さ」を完全に見失ってしまって、四半期の利益に振り回されています

→ 次ページ「米国に残された希望」を読む

固定ページ:
1 2

3

4 5 6

西部邁

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 2015-9-1

    神概念について ―ある越権行為のまえがき―

     神という概念は、宗教において最も重要なキーワードの一つです。神という概念を持たない宗教にお…

おすすめ記事

  1. はじめましての方も多いかもしれません。私、神田錦之介と申します。 このたび、ASREADに…
  2. 多様性(ダイバーシティ)というのが、大学教育を語る上で重要なキーワードになりつつあります。 「…
  3. ※この記事は月刊WiLL 2015年4月号に掲載されています。他の記事も読むにはコチラ 「発信…
  4. 「日本死ね」騒動に対して、言いたいことは色々あるのですが、まぁこれだけは言わなきゃならないだろうとい…
  5. ※この記事は月刊WiLL 2016年1月号に掲載されています。他の記事も読むにはコチラ 「鬼女…
WordPressテーマ「AMORE (tcd028)」

WordPressテーマ「INNOVATE HACK (tcd025)」

LogoMarche

ButtonMarche

TCDテーマ一覧

イケてるシゴト!?

ページ上部へ戻る