「殉愛」を読んで、やしきたかじんの生涯をおさらいしてみる

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やしきたかじん氏の死

 平成二六年一月三日、歌手、タレント、司会者のやしきたかじん氏(以降たかじん)が死去しました。享年六四歳でした。話芸には定評があり、「浪速の視聴率王」の異名を取るなど、特に関西圏では多大なる人気を博した方でした。また、話芸の時のダミ声とは打って変わって歌声は甘く澄んでおり、「あんた」「やっぱ好きやねん」等の名バラードを数多く残しています。この為、一部では「スズムシの声を持ったゴキブリ」等という異名を取っていたようです。関西風のパンチが効いた、しかしたかじんへの愛着を感じさせる表現ではあります。が、やはり少々可哀想な渾名ですね。
 
 このように、多くの人々に親しまれたたかじんの死は、他の多くの有名人の死と同様に静かに惜しまれ、人々の記憶から徐々に忘却されていくものとなるはずでした。が、どうもそうならないからこの駄文がある訳です。

たかじん死後の騒動おさらい

 たかじんの死後十カ月余りが経過した後に発売された「殉愛」(幻冬舎・百田尚樹)が、その騒動の発端となっております。百田尚樹氏といえば(説明不要でしょうが)、発行部数が四百万部を超え、本サイトでも何かと話題の「永遠の0」や、出光興産創業者の出光佐三氏をモデルとした「海賊と呼ばれた男」等で一世を風靡し続けている人気作家です。また(これまた説明不要でしょうが)、百田氏はNHKの経営委員を務める等、昨今では小説作家の枠に留まらない精力的な活動をしています。氏の関西弁で捲し立てるマシンガントークとスキンヘッドの風貌をお茶の間で見ることも珍しくなくなりました。

 まさに当代一流の人気作家となった百田氏の最新刊が、やはり人気司会者として名声を博したたかじんの闘病記とあって、発売日当日にはTBS系でテレビ特番が組まれる等、大手マスメディアはこの商機を逃すまいと必死であったようです。このような販売促進が功を奏し、特番は高視聴率を記録、「殉愛」は発売後たちまちベストセラーになったようです。

 ところが、発売から二週間程度が経った後、私は知人から「殉愛」がとんでもないことになっている、との情報を得ました。早速ググってみたところ、所謂「ネットが荒れる」状態となっており驚きました。その経緯は、概略以下のように整理できます。

 ①たかじん未亡人(以下未亡人)によく似た女性がイタリア人と思しき男性と写真に収まるブログ記事がネット上から発掘され、イタリア人との重婚疑惑が浮上
 ↓
 ②たかじんと懇意だった作詞家の及川眠子氏が、殉愛の表紙にもなっているたかじんのものとされるメモの筆跡に疑念
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 ③書籍通販サイト(筆者が普段目の敵のように悪く書いているA社のサイトです)の書評欄では、「だまされた!」「金返せ!」「永遠の0も含めて古本屋に売る!」等の大合唱が大晦日第九状態で鳴り響く。果ては「いい鍋敷きを見つけた!」等という痩我慢の説を開陳する御仁まで現れる。
 ↓
 ④これらにいちいち百田氏が反論、火に油を注ぐ(一連の反論の最中に「へんずり」発言などがあり火力増強)。
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 ⑤「殉愛」中で悪人的に描かれているたかじんの実娘(四一)が、プライバシーを侵害され、名誉を傷つけられたとして、発行元の幻冬舎に対し、「殉愛」の出版差止めと損害賠償を求めて東京地裁に訴訟を起こす
 ↓
 ⑥週刊文春十二月十一日号に、同誌に連載中の林真理子氏が本件に関して大手マスメディアが唖状態であることに疑問を提示。加えて、文春含めた週刊誌の姿勢を叱責(人気作家の記事の掲載中止を恐れて沈黙するとは何事か!といったニュアンス)。同誌十二月十八日号では、百田氏が「林真理子さんの疑問にお答えします」なる題の小論を寄せる。本件が遂にネットの世界を飛び出す。

 収拾つきませんね。

→ 次ページ「「隆仁」と「たかじん」どちらにも馴染めなかった生涯」を読む

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西部邁

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