死に至る道「移民政策」もうここまで進んでいる!

移民賛成は一・二%

 総理自ら〈時間をかけて満点を目指すのではなく、まずは、スピーディーに実現可能な、最大限の規制改革事項をまとめ、実行に移したいと思います〉(首相官邸HP)と述べている通り、「まず外国人労働者を入れること」そのものに重点が置かれていると言っていいだろう。

 外国人労働者の受け入れ自体が国民的議論(雑誌などのメディアで識者による様々な意見が発表され、国民が考える材料を与えられる状態)となる前に次々と政策が決まって行く中で、「このままではなし崩し的に条件が緩和され、実質的な移民政策につながるのではないか」と一部の国民が危惧するのも無理はない。

 政治には確かに決断力が必要だが、外国人労働者の受け入れ(と、その先にある移民政策)は集団的自衛権や憲法改正のように、かねてから一般的な議論があったものに決定を下したのではない。「国民的議論」はほとんどなされていない。わずかに産経新聞社『正論』が主催したシンポジウムくらいだろう。にもかかわらず移民政策が次々と政治の俎上にあがっている。

 情報を整理する間もないうちに連日、政府の方針が発表される現状に、ネット上の議論でもこれらの政策への疑念が渦巻いている。当然だろう、日本世論調査協会の調べによれば、移民政策を「推進すべき」と答えた人は一・二%に過ぎない(二〇一二年)。

 一方、「移民ではなく、あくまでも外国人材の受け入れだ」という方便はまだなくならない。

 総理が四月二十日に出演した「たかじんのそこまで言って委員会」でも関心の高まりを汲み取ってか「移民の受け入れも必要だと思うか」と質問された。総理が「×」の札を掲げたことをもって「一安心」、とする向きもある。

 だが出入国管理法改正で「外国人の高度人材」に対し三年の滞在で「永住権」を渡し、一方で単純労働者の受け入れを拡大し、期間を延長する。それをことさら「移民ではなく、一時的な受け入れ」というのは、単なる言い換えに過ぎない。

 総理も〈移民政策と誤解されないよう配慮しつつ外国人材の活用について検討を進めてほしい〉(朝日新聞デジタル、四月四日)と言っているのは、「移民政策」となると国民からの反発が高いことを分かっているからこそだろう。

欧州の惨状に学ぶべき

 しかも移民政策を実施した他国の事例では、最初は単純に「期間労働者の受け入れ」だったものが、労働者側の要請や「外国人以外の人員が手薄になったので帰られては困る」などの雇用現場の要請や、「家族を呼びたい」などの労働者の希望に沿い、長期間の定住、つまり本格的な移民政策へ舵を切らざるを得なくなったケースが見受けられる。

 その最たるものがドイツで、当初は「ゲストワーカー」として期限付きで受け入れていた外国人労働者の家族の呼び寄せや定住を避けることは不可能となり、制限を緩和した。すると今度は配偶者の雇用まで要求しはじめるようになった。当然、国家が彼らに払う住宅、教育、健康保険などの社会コストも必要になり、外国人街も出来て「ドイツの景色」とは思えない町並みもできた。

 当初労働力不足を補うために移民を受け入れ、その後、人道主義の立場から難民を入れて来たスウェーデンでは、昨年から移民による暴動が起きている。

〈スウェーデンの首都ストックホルム北部の移民が多く住むヒュースビー地区で十九日夜、警察に抗議する若者たちが暴徒化した。
 地元メディアによると百台以上の車両に放火、ショッピングセンターが壊され、警官三人が負傷。暴動は首都各地に広がり、少なくとも十数人が逮捕された。
 同地区で今月中旬、刃物をもった六十九歳男性が警察官に射殺されたことを巡り暴動が発生。鎮圧に来た警官は「サル」「ネズミ」などの言葉を使ったとされる。同地区は人口の八割を移民とその子孫が占め、差別や失業への不満が背景と指摘されている。〉(朝日新聞、一三年五月二十三日)

 移民が多く住むマルモ地域では、人口の四分の一をイスラム系が占めている。教育支援は手厚いが、親がスウェーデン語を話せないため、その子供もスウェーデン語が話せず、失業者が増加。結果、受け入れ国であるスウェーデンに不満の矛先が向かい、激しい暴動に発展しているというのだ。

 ヨーロッパの平均の八倍以上も高い出生率である移民は増え続ける一方だ。二〇五〇年までにはスウェーデン人口の過半数をイスラム系が占めると予測されている。

 スウェーデン国民の間でも「移民反対」の声は高まりつつあるが、反・反移民の国民からは、差別観をあらわにした先の事件での警察官のケースは別として、正当な批判も「過激なナショナリズム」「極右」「人種差別」「排外主義」「ヘイトスピーチ」「宗教差別」と見なされる矛盾も抱えている。

 フランスでは極右政党が躍進し、ロシアでも移民反対の暴動が起こるなど、ナショナリズムの高まりが指摘されるように、世界各地で移民による問題が噴出しているのである。

 移民推進派は受け入れる側の体制ばかり口にするが、入って来た移民が異国に溶け込む努力を怠るケースや、軋轢から暴動を起こすケースをどう理解しているのか。安易な受け入れは、自国民のみならず、移民側の将来さえ不幸にする。

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西部邁

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  1. 2014年 12月 22日

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