野々村竜太郎バッシングの陰に潜むもの

偽善の影に己の劣等感あり

福田恒存は、このような誰の目から見ても悪いに決まっていて、弁護の余地のないものや人物を過剰にバッシングするような姿勢を称して「それはある種の偽善である」と断じています。

(ケネディの暗殺事件関して)暗殺に対する感想と言ふが、初めに書いた様に、それは悪いに決まつてゐて、弁護の余地は全く無い、さういふものが沢山ある。同様に、良いものと無条件に決つてゐて、これだけは絶対に悪口を言つてはならなぬタブーも沢山ある。強者や権力者ばかりではなく、このタブーに対しても人々は日頃から劣等感を懐き続けてゐる。が、それだけに、暗殺の様に悪いと決まつてゐて弁護の余地の全く無いものに対しては禿鷹の様に襲ひ掛かる、これも人目ばかり気にしてゐる劣等感が裏返しに露出したものである。暫く前、汚職で起訴された関屋前代議士が病院から運び出されるのをテレビのニュースで見た事があるが群衆はその担架に襲ひ掛らんばかりにして悪罵の限りを尽くしてゐた、中年の女性もゐたし、若い人達も多かった、それを見て私は暗い気持ちになった。汚職もまた悪いと決まつてゐる事だ、感想や批評を求められても返答に窮する。が、これだけは幾ら悪口を言つても何処からも文句が出ないと承知して居丈高になるといふのは、やはりタブーに卑屈な弱者の劣等感が裏返しに出たものとしか思はれなかった。もしそれを公憤や正義感の発露と自他共に思ひ做すとすれば、偽善もここに極れりと言ふ外は無い
『保守とは何か』福田恒存 「偽善と感傷の国」 より)

かつて、評論家の中野剛志さんは、原発事件後のある東電の会見で、記者たちの前で、東電の社長が土下座させられてるシーンをテレビで見て、同じように嫌な気分にさせられたといいます。それも、聞くところによると社長に土下座させた記者は福島の記者ではなく、東京や他の地域から来た記者たちだったとか。まあ、そりゃあそうでしょう、福島の人間であれば、土下座などさせている暇があるなら一刻も早く放射能をなんとかして欲しいと切に願っているはずですから。

「なんで、弁護の余地がないほど悪いことをした人間を批判してはいけないのだ?」と言われれば、それまでですし、「それは、結局そういう行動を煽っているマスメディアが悪いのだ」と言われれば、その意見にも一理あると言わざるを得ないでしょう。しかし、それでも、何かこうあまりにも短絡的な思考でヒステリックに煽り立てる様子を見ると、違和感を覚えてしまうのです。例えば、今回の事件では「納税者の怒りが云々」という言葉も聞かれますが、そもそも、私たちのほとんどは野々村議員が県議を務めていた兵庫県には直接税金を納めていないですよね?そうなると、本当に野々村議員をバッシングしている彼らが本気で怒っているのかすら怪しいと思えてしまうのです。マスコミに乗せられているような面が無いとも言い切れないですが、むしろ、あえてマスコミの扇動に乗ることによって憂さ晴らしをしているようにも思えます。

もちろん、今回の事件に対する反応も事情もそれぞれ個々人によって変わってくるでしょうから、一概になにか「こうだ!!」と断定することはできません。しかし、たとえば、早稲田大学名誉教授の加藤諦三氏は「なにか、自分の行動や発言が立派過ぎると感じたら、自分の心の中に何があるのか点検してみるべきだ。」と述べることがありますが、このような事件が不祥事が発覚した際に、マスコミや世論の扇動に直接反応してワーワー騒ぐのも構いませんが、一方で、このように短絡的に反応してしまう世間の風潮や自分自身の心の中には、一体どんな感情や思いが隠されているのだろうか?と、どこかある種醒めた目であえて突き放した視点から自分や世間を眺めて点検してみることも必要なのではないかと思います。

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西部邁

高木克俊

高木克俊会社員

投稿者プロフィール

1987年生。神奈川県出身。家業である流通会社で会社員をしながら、ブログ「超個人的美学2~このブログは「超個人的美学と題するブログ」ではありません」を運営し、政治・経済について、積極的な発信を行っている。

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コメント

    • unk
    • 2014年 7月 28日

    野々村竜太郎バッシングの陰に潜むものは笑いだと思いますよ。

    • ろっく
    • 2014年 7月 28日

    大東亜戦争についても、戦争に負けただけで、戦前の日本を、戦後の日本はさんざん貶めてきました。
    その時から筋金いりです。
    最近は愛国に目覚めた人が、中韓を叩き日本は素晴らしいと言ってますが、世界中の誰がみても阿呆な国を叩かなければ、自国が素晴らしいとしか思えない連中が増えてきてるように思え、辟易します。
    少しは自己をみつめて欲しいものです。

    • 旅丘
    • 2014年 7月 29日

    野々村は…キャラクターが面白すぎて話題になったんでしょ。

    でも、塩村は正真正銘のゲスだし、被害者ぶってる態度も最悪だからまだ叩き足りないと思う。

    • 編集部
    • 2014年 7月 30日

    「笑い」は分析された方がよろしいかと。お勧めはアンリ=ベルグソン『笑い』、桂枝雀です。

    • 牧之瀬
    • 2014年 7月 30日

    上記コメントは私牧之瀬です。

    • 2014年 7月 31日

    野々村さんを本気でバッシングしてる人ってそんないるのかな?本気でバッシングするのはサブいと思うんだけどな。あれは不正叩きとか東電バッシングとかとは別次元の話だと思う。
    あれが普通の謝罪会見なら三面記事にちょこっと載ってそのまま流れて終わりです。野々村さんだったからこそあの謝罪ムーブメントを巻き起こしたのですよ!ある意味神レベルです、彼は!

    • あんころ
    • 2014年 8月 22日

    まったく、大きな悪には立ち向かえず糾弾できず差し障りのない小物だけを叩いて喜んでいるマスゴミと愚民には辟易する。

    • トヲル
    • 2015年 3月 17日

    野々村議員に対するバッシングは、あの会見がなければここまで過熱する事はなかったのではないかと感じます。
    意地の悪い言い方をするならば、『良いカモ』だったんでしょうね。自分自身の正義感に酔って高揚感を得るだけではなく、多分にガス抜きの役割を果たしていたのではないでしょうか。

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