消費増税延期の可能性が高まってきたのか

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安倍首相の発言がだんだん変わってきた。前回、消費税増税延期の際には「リーマンショック並の事が起こらない限り、再延期はない」と言っていた。3月18日の参議院予算委員会の集中審議で、「経済が失速しては元も子もない」と述べた。しかし実質GDP成長率は2013年度2.0%であったものが、2014年度にはマイナス1.0%にまで落ち込み、それ以後も消費の落ち込みから低成長が続いており、2014年度の消費増税で経済が失速して元も子もない結果になったのは明かだ。

これは1997年の3%から5%に消費増税をした後の経済の落ち込みをしっかり分析していたら予測できたはずだ。山一の破綻やアジア通貨危機に経済の落ち込みの原因があったなどという間違った分析のもとに、2014年の消費増税の影響は軽微と分析していたが、ここにきて消費増税の影響は予想以上に深刻だということが明白になった。そうであれば、消費増税でなく消費税率は5%に戻し、消費減税を行うべきだ。そうすれば、消費減税の景気浮揚効果は予想よりはるかに大きいことを知るだろう。

スティグリッツやクルーグマンという2人のノーベル経済学賞受賞者を招いて消費再増税を中止し財政出動をせよという内容の講演をさせる目的は消費再増税をストップさせるための口実をつくっているようにしか見えない。自民党内でも消費増税延期の意見がチラホラ出るようになった。2014年の消費増税の前には、消費増税の影響は軽微だとして内閣府も試算を示し、予定した5兆円の景気対策は、消費増税による反動減をはるかに上回るなどと、寝ぼけた解説を政府や財務省が行っていたのだが、今回来年の消費増税に向けての同様な試算や発言は一切ない。内閣府も追加消費増税を行った場合と行わなかった場合の比較は今回示していない。前回予測は完全に外れてしまったから出せないのだろう。こうした流れをみても、来年の消費増税を延期するために妨げになるかもしれない動きは止めておこうという政府の意図が読み取れる。

国民の多くは消費増税に反対である。野党はすべて消費増税に反対という中で、与党のみで消費増税を強行できるか。7月の参議院選、あるいは衆参同日選で与党は消費増税を対立軸に選挙戦に突入する事態は避けたいだろう。安倍首相の目標は衆参3分の2の議席を確保し、憲法改正を自分の任期中に成し遂げることだ。

先日のG20でも財政出動で落ち込んだ世界の景気を支えようと共同声明が出された。5月の伊勢志摩サミットでは日本は議長国だ。そこで、アクセルを踏もうと世界が合意しているときに、日本だけが消費増税というブレーキを踏むとことはできないのではないか。

というわけで、次第に消費増税延期のムードは出てきた。しかし延期幅は1~2年だと言っている。それでは、また近いうちに消費増税があると国民は認識し、節約ムードに歯止めは掛からない。延期でなく中止すべきだ。それより5%に戻すようがずっとよい。2016年度補正予算の検討もされているようだが、5~10兆円の規模だ。しかも1年間だけ。これでは失われた20年からの脱却はおぼつかない。思い切って最低でも20~30兆円規模で数年続けるべきだ。そうすれば、デフレボケの日本人は目を覚ますに違いない。

小野盛司

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