※この記事は「チャンネルAJER」様より記事を提供いただいています。
他の記事も読むにはコチラ
日銀がお金を刷って国債を買うというところまでは、アベノミクスは評価できる。問題は刷ったお金を使わずに、消費増税をしたことだ。その結果何が起こったか。実質所得が減って国民が節約を始め消費が減ってきた。デフレの日本にとって、これが最悪の結果だ。GDPの6割を占める消費を回復させない限り日本経済の復活はない。円安で輸出企業の業績を伸ばせばよいと考えるかもしれないが、中国経済も不安がある。輸出で利益が出ても国内の消費が伸びないと、稼いだカネを国内に投資しようとしない。
デフレは回復していない
更に悪いのは、政府が日本経済について楽観的すぎることだ。今月出された年次経済財政報告の表紙には「四半世紀ぶりの成果と再生する日本経済」と書いてある。それだけではない、8月24日の参議院予算委員会で安倍総理は「好循環着実に回り、四半世紀ぶりの良好な経済状況」などと言っている。現在が四半世紀ぶりの良好な経済状況であると感じている人はほとんどいないだろう。
一体何を根拠に四半世紀ぶりの良好な経済状況であると主張しているのか、年次経済財政報告を読んでみた。どうやら、2015年1-3月期の名目GDPが、前期比9.4%増という速報値が出たことで、このような主張をしているようだ。しかし、その直ぐ後にこの数字は訂正され、確報値では9.0%となり、2011年7-9月期の9.0%に及ばなかったわけで、「四半世紀ぶりの良好な経済状況」という表現も間違いということになる。
原油価格が上がったから、GCPが伸びただけ
そもそも今年1-3月期のGDPが伸びた理由と言えば、原油価格の値下がりのためだった。原油価格が下がっただけで、原油の輸入量が同じでもGDPは伸びる。
それはGDPが
GDP=民需+政府支出+貿易収支
貿易収支=輸出-輸入
という式で計算されているからだ。
つまり輸入はGDPにマイナスで入っているので輸入額が減ればGDPは増えることになる。給料が減って輸入品が買えず、買い控えをしてもGDPは増える。それが良好な経済状況と言えると考える人はいないだろう。少なくとも1-3月期のGDPが増えたことは、政府の政策がよかったからではなく、単なる原油価格の下落が原因であり、また原油の値上がりがあればGDPは下がる。
しかも4-6月期の実質GDP成長率は年率換算でマイナス1.6%となっており、ますます化けの皮がはげてきた感がある。それにアベノミクスの頼みの綱だった株価も不安定になってきた。消費支出も7月は前年同月比で0.2%減で、マイナスは2か月連続であった。
トリクルダウンは起きていない
実質賃金も減り続けている。2010年の平均を100としたとき、2013年6月の実質平均賃金(ボーナスを含む)は137.7、2014年6月は132.0、2015年6月は128.1であり減少が続く。このように、安倍内閣になって以来、実質賃金は減り続けており、当然消費はそれに連動して減る。つまり国も国民も貧乏になりつつあるのだ。
それに安倍総理は気付いていないのか「四半世紀ぶりの良好な経済状況」などと見当違いの発言をしているときではない。また財務官僚に騙されているのだろうか。現状を四半世紀ぶりの良好な経済状況と思っている人はほとんどいないだろう。たしかに一部の輸出企業は業績を伸ばしているかもしれないが、トリクルダウンは起きていない。自民党幹事長の谷垣氏が言っているように、今は緊急の経済対策が必要な時だ。
小野盛司
コメント
この記事へのトラックバックはありません。
この記事へのコメントはありません。