「月曜日の夜、街からOLが消える」
このフレーズにピンと来た方はいらっしゃるでしょうか?
1991年1月~3月の夜9時から、フジテレビ系列で放送されていたドラマ、「東京ラブストーリー」の人気を表現するために週刊誌が用いた例えといわれています。
おおよそ、80年代後半から90年代後半にかけては、テレビドラマの全盛期といわれています。年に数本、平均視聴率が30%を超えるドラマが出てくるのは当たり前で、またテレビ番組とタイアップした楽曲のCDが100万枚以上の売上を記録することも珍しくありませんでした。
例えば、先述した「東京ラブストーリー」の主題歌である小田和正の「ラブストーリーは突然に」やその後の月9で放送された「101回目のプロポーズ」の主題歌、CHAGE&ASKAの「SAYYES」、安田成美と中森明菜主演「素顔のままで」の「君がいるだけで」などとあげればきりがありません。
これらの曲は年間のヒットソングランキングの上位にも現れます。つまり、この時期は流行歌とドラマが色濃く紐づいていた時期でもあったのです。
ドラマの主題歌が売れる意味
さて、ドラマの主題歌が年間のヒットソングランキングに並ぶとはどういうことでしょうか?
もちろん、その曲自体が良いことは言うまでもありませんが、単純に考えればドラマにはまっている人々が今はなき、8cm版のCDを買っていったということでしょう。
ここでポイントになるのは、レコードではなくCDだということです。
さまざまな売上を独自集計してランキング化していく、オリコンのLP(レコードプレーヤー)チャートがなくなったのは、1989年11月のとき。
ちょうど、私がReport.2で定義した90年代の始まりの時期と重なってきます。そういう意味で、CD(当時はまだ8cm版が主流でしたが)は90年代の新しい文化として花開いたわけです。
そして、いつの時代も新しい文化を取り入れていくのはおおよそ、若者であり、購買力のある20代が中心となります。
それでは、当時の20代はどのような人々がいたのでしょうか?
80年代を通じて増加した「働く女性」
下記のグラフは平成24年度、総務省が作成した労働力調査のデータを再編したものです。
1980年ごろから、就業している25歳から29歳までの女性の数が10%以上増加しています。戦後日本において、女性も高等教育を受ける機会が増えたことによって、誕生した世代といえます。
新しい世代だからこそ、当然、彼女たちは消費社会の主役として、メディアや代理店からターゲットとされます。ただ、衣食住が事足りた時代に高等教育を受けるほど、経済的に困っていない家庭に育った彼女たちの購買意欲を掻き立てるには一工夫必要でした。
フランスの社会学者、ボードリアールは著作『消費社会の神話と構造』で、衣食住が事足りるに連れて、人々はモノや機能ではなく、記号を消費するようになったと定義しています。
例えば、服という製品は着ること、暖を取ることなどが機能として求められますが、記号を消費するようになると、模様やブランドといったところに価値を見いだすようになります。
そして、究極的にはその記号を消費することによって、他人と差異化した自分の人生、ライフスタイルに価値を見出し、投資するようになるのです。
それでは、「働く女性」に記号をどうやって提供したのでしょうか?
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