金融循環がもたらす経済危機?
- 2014/6/30
- 社会
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金融循環から見た財政政策のあり方
金融循環は、日本の経済政策の動向にも強い影響を及ぼしています。
図3で示したように、金融循環のピーク時には、公的支出対比でのGDPが上昇し、税収が増えて財政赤字(図3の「一般政府貯蓄投資バランス」とほぼイコール)が縮小します。
【図3:金融循環と財政政策の関係】
これに対して、消費税増税は前回、今回とも、金融循環のボトム付近で行われています。大局的に見れば、金融循環の影響で拡大した財政赤字に短期的に反応したものと言えるでしょう。
しかしながら、これでは経済が最も弱い時期に行う最悪のタイミングでの増税に他なりません。
しかも、景気動向の影響を受けにくい間接税の引き上げは、財政が持つ経済安定化機能(ビルト・イン・スタビライザー)を低下させ、景気悪化に対する家計や企業の抵抗力を弱めてしまいます。
結果として、前回増税と共に始まった財政支出削減と相まって、却って財政赤字を悪化させる結果になっています。
法人税についても全く同じ構図が当てはまります。
「法人税を下げれば日本への投資を活発になる」という意見があるようですが(例えば、内閣官房参与の浜田宏一氏)、前回プレゼン「積極財政こそが成長戦略」でも述べたように、設備投資を左右するのは法人税率ではなく、「日本国内でどれだけ利益を伸ばす機会があるか」です(図4、図5)。
しかも、現在検討されているのは、法人所得税を引き下げた分を外形標準課税その他で埋め合わせる方向ですが、これでは消費税増税同様、経済安定化機能が低下してしまいます。
【図4:法人課税と企業設備投資の推移】
【図5:企業の営業利益と設備投資の関係(1980~2012年)】
また、これも「積極財政こそが成長戦略」で指摘したことですが、法人所得税引き下げと外形標準課税引き上げをセットにするのは、主流派のファイナンス理論から見ても不合理な政策です。
すなわち、
投資案件の価値=年間利益の期待値÷(調達金利+リスクプレミアム-期待利益成長率)
がファイナンス理論の教えるところです。投資案件の価値が必要投資額を下回れば、その案件に投資しない方が合理的ということになります。
制度変更前後の税収を変えない前提で法人所得税引き下げと外形標準課税引き上げをセットにした場合、企業から見た利益の期待値は従来のままです。他方で、投資が失敗した時の損失」と「投資が成功した時と失敗した時の損益格差」がいずれも拡大するので、リスクプレミアムは従前と比べて確実に上昇します。結果として当該案件の投資価値が下がってしまうので、経済全体ではむしろ投資にブレーキがかかることになります。
前半でも述べたように、ひょっとすると経済ショックが近い将来訪れるかもしれません。一連の政策が実行されれば、そうした場合の日本経済全体の抵抗力が弱まりかねないこと、それが当面の懸念点です。
↓今回のプレゼンテーション資料をまとめたものです。
金融循環がもたらす経済危機?.pdf
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