日本にGoogleが生まれない理由

Googleは違法コピーか

 私の記憶にある限り、Windows95で市場を制圧したマイクロソフト、「iPod」や「iPhone」のアップルの大躍進のときも、「どうして日本に」と同じ調子で嘆いていました。相手はみなアメリカ企業。ここに「日本にGoogleが生まれない」3つめであり、最大の理由が見えてきます。それは、両国国民の「ルール」の捉え方の違いです。

 Googleはいわずと知れた検索エンジンの世界最王手。世界中のネット情報を収集し、検索リクエストに応じて情報提供する仕組みです。かつて、この「収集」が「違法(無断複製)」にあたると指摘されました。ブラウザによる閲覧も、厳密には一時的に「複製(コピー)」している訳ですが、これはレコード鑑賞と同じ「私的利用」だからセーフ。一方、集めた情報をもとにビジネスを展開すれば「商用利用」で著作権法に触れるというものです。相手先の許可無く「リンク」を貼る行為でも、引用か窃盗かで議論が割れた時代です。

 Googleは「フェアユース」という、アメリカ国内の著作権の概念で抗弁します。ざっくりといえば、著作者の権利を侵害しなければ、無断利用でもセーフというもので、Googleがデータを保存するサーバが、アメリカ国内にあるのでアメリカ国内法の管轄にあるという主張です。

アメリカのルールを押しつける

 実際には日本や、アメリカ以外に設置されているサーバの情報も、無断で複製していくわけですから、屁理屈に過ぎないのですが、国境を越えて情報を窃盗する事案を想定した法律は、Googleが問題提起するまで存在しませんでした。その後、GoogleマップやGoogleブックスでも同様の軋轢を起こしながらも、次々と「新しいルール」を勝ち取っていきます。

 最近の事例では、配車システムの「UBER(ウーバー)」とは、何のことはない無認可タクシーの「白タク」ですが、特区による社会実験などの抜け穴を見つけては認知を進め、いまや日本国内の法律を動かしつつあります。新しい何かを創りあげるとき、既存のルールを無視するところがアメリカ人、アメリカ文化にはあります。それはアメリカが「人工国家」であることと密接な関係を持つのでしょう。

 神話を祖に持つのは我が日本だけではなく、EU諸国は、軍神マルスの双子の子とされるロムルスとレムスが建国した古代ローマの影響下にあります。こうした国々では、伝統や風俗として受け継がれながら、明文化されていない慣習法があり、その起源は人智を越えます。日本における「お天道様が見ている」という道徳観も同じ。一方、現代人により建国された人工国家にそれは希薄。だから「ルール」に自覚的です。

アメリカ×エンジニア

 この場合の「ルール」には公益の実現という意味が含まれ、どこかの人材派遣会社の会長が、自社の利益に直結する、移民受け入れを政府に働きかけるのとは志が違います。自動車が普及したことで「道路交通法」が生まれたように、現行法がテクノロジーの進歩に追いついていないなら、現行法を改めるべきだと考え、行動を持って現実を更新してきたのがGoogleでありUBER、そしてそれを支持するアメリカ国民であり、アメリカです。

 翻り日本はどうか。ITベンチャーの多くが「現行法」の枠内でビジネスを展開しようとします。そしてそれが常識であるのは、法令遵守をなによりも大切とする国民性があるからです。また日本を取り巻く環境がきな臭くなりながらも、「憲法九条」の墨守を掲げる「護憲派」に一定の理解があるのも、ルール墨守を是とする国民性ゆえです。

 つまり、明確な意志のもとに「ルール破り」を目指す「Googleのような企業」を日本人は好まない、だから生まれる訳がないのです。

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西部邁

宮脇 睦

宮脇 睦

投稿者プロフィール

一九七〇年生まれ。プログラマーを振り出しにいくつかの職を経た後、有限会社アズモードを設立。著書に『楽天市場がなくなる日』『Web2.0が殺すもの』(洋泉社ペーパーバックス)、の他、電子書籍で『完全ネット選挙マニュアル』を刊行。

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