共謀罪って本当に必要なの?~共謀罪の危険性について考える~

じゃあ、なんでそんな法整備が必要なの?

では、何故このように様々な問題のある共謀罪を自民党などは創設しようとしているのでしょうか?

自民党の谷垣禎一幹事長は17日、パリの同時多発テロ事件を受けて、テロ撲滅のための資金源遮断などの対策として組織的犯罪処罰法の改正を検討する必要があるとの認識を示した。改正案には、重大な犯罪の謀議に加わっただけで処罰対象となる「共謀罪」の創設を含める見通しだ。

テロ対策に「共謀罪」創設検討 自民幹事長が言及
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151117-00000032-asahi-pol

このような記事を読むと、あたかも共謀罪が直接的にテロを予防する効果があるかのような印象を受けますが、実はそうではありません。

今回の共謀罪の意義に関して、政府の説明では、

2000(平成12)年11月に国際連合総会で採択された国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(国際組織犯罪防止条約)が、重大な犯罪の共謀、資金洗浄(マネー・ロンダリング)、司法妨害などを犯罪とすることを締約国に義務づけたため、同条約の義務を履行しこれを締結するための法整備の一環として、本法を改正して組織的な犯罪の共謀罪を創設する提案がなされた

とありますが、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約の内容を見ると、

本条約において「組織的な犯罪集団」とは、三人以上の者から成る組織された集団であって、物質的利益を得るため重大な犯罪又は条約に従って定められる犯罪を行うことを目的として一体として行動するものをいう。

とあります。つまり、これはテロを直接的に防止する目的で作られたというより、むしろ、テロリストの資金源を断つために、マネーロンダリングや麻薬の取引等を取り締まる目的で作られたものなのです。もちろん、このような法律にテロを抑止する効果がないとは言いませんが、現在報道されているような、「共謀罪とはテロを防止するための法律だ!!」というような印象と現実の運用等には一定のギャップが存在することは理解すべきでしょう。

共謀罪で犯罪の捜査範囲が拡大する?

また、この共謀罪を創設すると警察の捜査範囲や、捜査の権限が大幅に拡大するのではないか?と懸念する専門家もいます。どういうことなのかというと、捜査の権限は、基本的に犯罪行為が行われている可能性がある場合に、その犯罪が行われているかどうかを調べるのに必要と思われる範囲に限定されるのですが、もし、ある人物が犯罪について他者と相談するだけでも犯罪になるとしたらどうでしょう?基本的に、誰かが犯罪行為について他者と相談していないかと調べるためには、その人物の会話などを盗聴する必要があります。

奇しくも、現在政府は一般に「盗聴法」と呼ばれる「通信傍受法」の改正と、その範囲の拡大を目指しています。これらの法律の改正が実現すれば、政府や警察は合法的に一般市民への盗聴や監視を行うことが出来るようになるでしょう。

ここまでの問題点をまとめると

ここまでの問題点をまとめると、まず、一つには、刑法典における,既遂の処罰の原則に反していること。次に、刑法上の原則である罪刑法定主義に違反しており違憲である可能性もあること。そして、最後にこの共謀罪が創設すると警察の捜査権限が大幅に拡大する可能性があることです。もちろん、他にも様々な問題点はあるのですが、主なものではこんなところでしょう。

一方で、ではこれが本当に日本国内でテロ抑止に効果的かというとそれは疑問です。そもそも日本では基本的に武器や凶器の所持自体が非常に厳しく制限されているので、テロの計画を立てたところで、すぐに実行することは不可能です。まずは、武器の調達が必要ですし、日本ではテロリストを行うような犯罪組織や、犯罪勢力が国内に存在しないため、そもそも相談するにも相談相手すらいないというのが現実でしょう(テロを実行するための武器も持たず、実行ノウハウがない人間や組織にテロの実行計画を相談したところでほとんど机上の空論に過ぎません)。そうなれば、武器や凶器の所持の取り締まりや、海外から怪しい人物を国内に入国させないように取り締まりを強化する方が余程実効性が高いのではないでしょうか?

このように、その有効性には相当に疑問符が付けられますが、先に指摘した数々の問題点はほとんど確実に起こります。つまり、メリットは本当にあるのか良くわからない一方で、デメリットは確実に存在するわけです。果たして、何に効くのかも、本当に効果があるのかも分からないけど、深刻な副作用が確実に存在するようなクスリを飲みたいと思う人なんているのでしょうか?

危機感を煽る報道にはご注意を

現在では、テロの脅威を徹底的に煽り、「グローバルなテロが蔓延する現在、日本でも明日にでもテロが発生してもおかしくはない!!」とでも言わんとするような報道が一部でなされています。

このような状況で、「テロを防止するために○○という方整備が必要不可欠だ!!」と言われると、どうしても不安になり「たしかに、そうかもしれない・・・」と賛成してしまいがちではありますが、できれば先に挙げたような反対派の主張する危険性なども冷静に考慮し、「共謀罪に反対する人間は、日本国内でテロが起こっても良いのか?!」などという感情的な議論ではなく、その中身をしっかり検討しながら、メリットやデメリットについて考えたうえで、賛成、もしくは反対してほしいと思います。

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西部邁

高木克俊

高木克俊会社員

投稿者プロフィール

1987年生。神奈川県出身。家業である流通会社で会社員をしながら、ブログ「超個人的美学2~このブログは「超個人的美学と題するブログ」ではありません」を運営し、政治・経済について、積極的な発信を行っている。

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コメント

    • 調査報告
    • 2016年 8月 26日

    タイトル:共謀罪が日本で成立していない理由

    共謀罪は、日本を除く全ての先進国を含む185の国と地域で締結されています。
    日本では過去3回も国会に提出されながら 全て(共産党・社民党・旧民主党)が反対し、成立を阻んできました。
    それは、彼等が言論の自由を過度に拡大解釈し、既得のものとしてきたことにあります。 つまり、共謀罪を我が身に適用されるのを恐れてのことであることは明白です。

    共産党と繋がる反天連(反天皇制運動連絡会)は、日の丸に✖印を書いて 天皇無くせ! とデモ行進し、日本を 天皇を 否定し貶める言動を毎年のように繰り返しています。
     
    民主党は実態を誤魔化すために党名を(民進党)と変えました。
    (民進党 結党大会)では、会場の正面には巨大な(民進党)の文字を張り、ステージには アリバイ程度の日章旗を立てかけていました。 国家である君が代は斉唱どころか 曲さえも流さずに、党員の挨拶・演説では 殆どの党員が国旗である日の丸に(礼)もせず、素通りし無視し続けました。 
    ★国民はネットで この事実を確認して欲しい。・・・民進党の本性を知ることができます。
    社民党 や 生活の党 といった小政党も同様です。

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