東芝の「経営破綻」はありえるのか。財務分析で分かった現状
- 2015/12/14
- 経済
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流動負債と流動資産のバランスを見る
続いて流動負債と流動資産のバランスをチェックしてみましょう。
(※注)
・流動負債とは? ― 1年以内に支払わなければならない負債、もしくは営業に関わる負債
・流動資産とは? ― 1年以内に現金化される資産、もしくは営業に関わる資産
東芝は2015年6月30日現在で、4,053億円の短期借入金を計上しています。この短期借入金は同年3月31日より、わずか3ヶ月で1,090億円も増加しています。
これは、恐らく不適切会計が発覚した影響で売上が急落し、費用の支払いに窮して信用不安が起こらないように、事前に借入をして万が一の事態に備えた結果の表れと推測されます。
ただ、4,000億円以上に膨らんだ短期借入金に対して、2,000億円程度の現預金しかなければ、金融機関が一斉に手を引いた時に東芝はひとたまりもありません。
つまり、この短期借入金と現預金のバランスについては決して理想的なものではなく、逆に不適切会計から業績が悪化した場合に経営危機に陥るリスクが高いといっても過言ではないのです。
ただ、より大きな視点で、流動負債と流動資産のバランスを見ると、流動負債が合計で2兆9,249億円に対して流動資産が3兆3,288億円ありますので、流動比率を計算すると113.8%となり、経営危険度の目安となる100%は上回っていますので短期的に危機的な状況に陥る可能性は低いといえるでしょう。
とはいえ、流動資産に計上されている「受取手形及び売掛金」と「棚卸資産」には注意が必要です。
「受取手形及び売掛金」とは、簡単にいえば、製品やサービスを販売した際に、販売先に支払いの猶予を与えることです。
通常であれば製品を渡す代わりに現金を受け取るはずですが、商習慣として製品は先に渡して支払いは受取手形や売掛金として数週間から数ヶ月先に現金化されるのが一般的であり、現金化されるまでは流動資産の「受取手形及び売掛金」に計上されることになるのです。
東芝はこの「受取手形及び売掛金」の残高が6月30日現在で1兆1,787億円に達しています。これは、売上の2.14ヶ月分に相当します。
この「受取手形及び売掛金」が100%回収できるようであれば問題はありませんが、もし販売先が倒産するなど債権が焦げ付くようであれば、流動資産が目減りすることにつながっていきます。
同じように「棚卸資産」を見ていくと、1兆1,499億円の残高があります。この「棚卸資産」とは簡単にいえば、製品在庫のことであり、もし製品が古くなって売れなくなるような不良在庫が発生するようであれば、「棚卸資産」の残高は大きく減少する可能性も考えられるのです。
そこで、より詳細に東芝の財務状況を把握するためには、このような「受取手形及び売掛金」や「棚卸資産」が不良債権化していないかチェックしていく必要があるといえるでしょう。
自己資本をチェックする
それでは最後に、東芝の自己資本はどうでしょうか?
東芝は老舗企業らしく、これまで大きく内部留保を積み立ててきています。利益剰余金の額は3,710億円に達しており、日立の1兆4,775億円には遠く及びませんが、シャープの984億円に比べれば、まだ余裕のある水準といえるでしょう。
また、自己資本比率を計算すると17.3%であり、日立の24.1%ほどではありませんが、シャープの12.3%よりは高い水準にあります。
自己資本部分も1兆円を超える水準にあり、余程巨額の赤字を計上しない限りは、債務超過に陥って経営が破綻する可能性は低いといえるでしょう。
このように、東芝の貸借対照表を分析する限りは、もちろん健全とは言い難い面もありますが、すぐに経営危機を迎えるような「瀕死の状態」に陥っているというわけではないようです。
不適切会計を二度と繰り返さないと反省し、大きな背伸びをしない経営に徹すれば、現状の体力で十分に再起は可能といえるのではないでしょうか。
今回は貸借対照表から東芝の経営状況を分析してきましたが、次回は損益計算書とキャッシュフローの観点から東芝の今後を占っていきたいと思います。
※ 実際に財務諸表を見ながら読むと理解も深まります。
今回のコラムに登場した3社の財務諸表は以下のサイトからダウンロードいただけますので、是非ともご活用下さい!
東芝:2015年度第1四半期決算(連結)
シャープ:平成28年3月期 第1四半期 決算短信
日立:要約四半期連結財政状態計算書
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