【国際情勢】2015年、岐路に立たされる日本(3)「“憲法改正”は中国の罠である」

中国の対日戦略は“続行中”

そうはいっても、全ての日本人は、中国の戦略を決して忘れるべきではありません。もう一度、中国の「対日戦略」を復習しておきましょう。

1、日本は「右傾化している」「軍国主義化している」「歴史修正を求めている」と全世界で強力にプロパンガンダする

2、中国、ロシア、韓国、【アメリカ】で【反日統一戦線】を構築し、日本を世界で孤立させる

3、これによって、日米同盟を破壊する

4、日中戦争時、アメリカが日本を助けない状況をつくりだす

5、尖閣、できれば沖縄も奪う

となります。

結局、中国の戦略の要は、「中国、アメリカ、ロシア(当時ソ連)は、一緒に日本をぶちのめした。ところが日本は、ふたたび我々に反逆しようとしている。だから、もう一度一体化して、一緒に日本をぶちのめそう!」です。

ちょうどいいチャンスというか、今年は終戦70年。いわゆる戦勝国の国々では、いろいろな催し物が予定されている。そのたび、「中国、アメリカ、イギリス、ロシア(当時ソ連)は一体化して、ナチスドイツと日本と戦った同志である!!!」と過去を思い出させることができる

そう、終戦70年の2015年は、中国がふたたび「反日統一戦線」を構築する絶好のチャンスなのです。

二つの大問題

しかし、中国が「日本は右傾化している」「軍国主義化している」「歴史を修正しようとしている」と主張するとき、その「根拠」「証拠」が必要になります。それはなんでしょうか?

中国が使っている一つの証拠は、「靖国参拝」です。このプロパガンダが世界でかなり浸透していることは、2013年末の総理参拝で明らかになりました。

今年は、さらに二つの問題に焦点があたりそうです。一つは、「安倍談話」です。

青山繁晴先生は、「総理はわざわざ問題をつくっている」とおっしゃられていますが、私も賛成です。「村山談話」と同じ談話は出せないでしょう。同じ内容なら出す意味がない。

では、たとえば「日本は侵略国ではない」というニュアンスの談話を出せばどうでしょうか? 日本の保守は、「あっぱれ!」と喜ぶことでしょう。私だって、心情的には喜ぶに違いありません。

しかし、すべての言動には、「結果がつづく」ことを考えなければなりません。

プーチンが「クリミア併合」を断行したとき、ロシア国民は大喜びでした。その後「過酷な制裁」を課され、ルーブル暴落とインフレで生活が苦しくなるなどと考えた庶民はいなかったのです。

「保守派を喜ばす安倍談話」の結果はどうでしょうか? そう、中国の主張、「日本は歴史の修正を目指している」の証拠になってしまう。いったい「歴史の修正」とはなんでしょうか?

いままでの歴史観の本質は、

アメリカ・イギリス・ソ連・中国=善  日本=悪

です。

これを安倍総理は、

日本だけ=善  アメリカ・イギリス・ソ連・中国=悪

と「180度ひっくり返したい」ように戦勝国からは見える。

こういう「歴史観修正」は、日本人にはうれしいことではありますが、戦勝国側は決して受け入れられませんし、許さないでしょう。つまり、「安倍談話」は内容次第で、「アメリカ、イギリス、中国、ロシア」を同時に敵にまわす危険性を秘めているのです。

安倍総理は

・支持基盤である保守派の喜ぶ談話を出せば、世界的に孤立し、中国の罠にはまる

・戦勝国を喜ばす談話を出せば、支持基盤である保守派を幻滅させる

という、非常に厳しい状況に自らをおいてしまったのです。それで青山先生は、「自分で問題をつくっている」とおっしゃった。そう、一番いいのは、「安倍談話」を出さないことです。

もう一つの問題は「憲法改正」です。

選挙で大勝した安倍総理は、いよいよ「憲法改正」に意欲を見せはじめました。

皆さんご存知のように、私は「アメリカ製憲法」を「神聖視」していません。心情的には、「アメリカ製憲法はどんどんかえてしまえ!」と思います。それどころか、「日本人自身の手で憲法をつくれ!」とすら思います。

しかし、事実として、憲法改正を一番喜ぶのは習近平です。

日本がアメリカ製憲法を直せば、日米関係はよくなりますか? 悪くなりますか? 日米関係が悪くなれば、中国は尖閣、沖縄をとりやすくなりますか、とりにくくなりますか?

だから、私は、安倍総理が「中国の罠」にはまる、現時点での「憲法改正」に反対です。それで得をするのは、中国と韓国なのですから。

というわけで、中国は今年、「終戦70年」というキーワードを利用して、ふたたび、中国、ロシア、韓国、アメリカによる「反日統一戦線構築」にまい進するという話でした。

日本は、「安倍談話」「憲法改正」など、中国のプロパガンダの正当性を裏づけるような言動について、極力慎重であるべきです。

ここで失敗すれば、日本は中国の罠にはまり、「いつか来た道」を歩みはじめることになります。しかし、ここを見事クリアできれば、日本は安泰でいられるでしょう。

2015年、岐路に立たされる日本(1)
2015年、岐路に立たされる日本(2)

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ロシア政治経済ジャーナル

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コメント

    • HH
    • 2015年 10月 17日

    見事な分析だと思います。

    なんと言ってもわが国の存続と繁栄が大目的なのですから、そのためには心情を一時棚上げとして行動を決めることが重要ですね。現政権(特に安倍総理)がそういう感覚を持っていることを、切に願います。とは言え一般大衆がそれを理解するかどうかは、また別の問題かもしれません。人は理性ではなくどうしても感情で動いてしまいますから。自分自身の日常生活を振り返ってもその通りで、反省点多々有りです。

    憲法改正についてですが、現時点で改正にのめり込まない方が無難だと思います。私が思う理由のひとつは、いわゆる保守の言論人の一部の「憲法改正のために大阪の橋下徹を、国政で利用したい。」という意見です。なんとなれば、正真正銘の詐欺師である橋下なぞとは、金輪際関わるべきでないと思うからです。今憲法改正することを大命題とするから、「詐欺師を使ってでも・・」という発想になるのだと思います。使ったつもりが滅茶苦茶にかき回されたという、大阪のような状況にならないよう望みます。

    国際連盟を脱退して帰国後、松岡全権代表を熱狂的に迎えた日本国民。その後の長い戦争と敗戦。この歴史から学ぶことは、とても大きいですね。

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