伊集院病棟へようこそ?―ドクター非モテの非モテ教室(その六)

オプションに洩れなくトラウマがどっちゃりついてきます。

博士:えぇ~と、アレか、「自ギャグの詩」。

:マニアの間では「トラウマ系」と呼ばれているコーナーね。他にも「夏のタイムマシーン」、「いじゅパパの子育て日記」とその系譜はあるんだけれど……とにかく「自ギャグの詩」は投稿の一つ一つを紹介したくなるような名コーナーだったわ。

助手:また長い引用になるの?

:う~~ん。要旨だけ抜き出すと、よさがわからないのよね……こういうのってディティールが重要なの。

助手:あんまり長いと、読んでもらえないし……。

:まあ、何とか紹介してみましょう。
 投稿者の「ぼく」が小学校五年の時、小学校の学習発表会で『ドラえもん』を扱うことになったの。班に分かれて行う自由研究だけど、他の班が普通のマジメな研究をやっているところを、「ぼく」の所属する班は斬新なテーマを選んだワケ。
 この研究は他の班からも注目され始めるんだけど、そんな折、クラスのドラえもん博士であるH君がイヤミを言いに来た。この意地悪なH君の嫌味に、好きだったBさんが泣くのを見た「ぼく」は、ついふかしちゃうの。

「Hが知らないドラえもんのひみつを俺、知ってるから、発表会の日になって驚くなよ」

博士:まるでのび太そのものじゃな。

 言った途端「しまった」と思いました。
 今なら言葉の最後に「うそぷり~けつぷり~」(当時ぼくたちのクラスの流行語)をつければ取り消せると思ったその時、
「うそぷりけつぷりじゃ済まないからな」
 とH君が言いました。
 売り言葉に買い言葉。さらに値段を吊り上げての売り言葉を、ぼくは高値で買ってしまいました。
「親戚のおじさんが、小学館に勤めてんだよ」
 こうなったらハンマープライスです。
 相手がさらに吊り上げてきたらあっさり降りよう。「うそぷり」の「う」の口の形をしてH君の反撃を待っていると、H君が言いました。

「ホントに……!?」

 楽しみにしているからと言い残し、H君は行ってしまいました。

助手:なるほど、H君も根はいい子なんだな。こうして見ると、自分の大好きな『ドラえもん』で他の連中が盛り上がってるのが寂しかったんじゃ?

:いや……お兄ちゃん、そういうことじゃなくて……。

博士:上のエピソードから、他に何を読み取れと?

:この「うそぷりけつぷり」の下り、先の「三人くらいで流行ったブーム」同様、いかにもなリアリティがあるでしょ? こういうディティールがあるからこそ、投稿もぐっと迫ってくるの。

博士:まあ、それはよいわ。この後どうなるのじゃ?

:「ぼく」の一言で班は勢いを盛り返すんだけど、当然、出任せを言った本人は大慌て。とうとう、発表会当日まで有効な手を打てなかったの。

 翌日の放課後、ぼくは班の皆の前に「(秘)」と書かれた封筒を差し出しました。
 中にはぼくの汚い字で、「来月号に出る道具:ワープハット」と書かれた紙が入っていました。皆はとても喜びました。
(中略)
 かくして、壁新聞『ドラえもん ひみつ道具のひみつ』は完成し、学習発表会も苦笑いで教室の前に立っているぼくを尻目に、Y君が「なお、このワープハットについては、来月号の『コロコロコミック』で、全てが明らかになります」と締めくくり、大好評でした。
 この翌月、あわよくば、偶然、偶然ワープハットなる物が『コロコロ』に載ってくれたら全て丸く収まる、というぼくの常識外れな願いは、当然却下されました。

:この「ひみつ道具のひみつ」っていうのも小学生っぽくて、ぐっと来るわね。

助手:で、どうなったの?

博士:まあ、全員からフクロにされるかシカトされるかは不可避じゃな。

 そしてぼくの立場がどうなったのかについて。
 実際の所、ぼくにもよくわかりません。
 何故ならば、ぼくはずっとウソ特急に乗り続けたからです。
 確か停まった駅は「掲載が延期になった」「おじさんと連絡が取れない」「あれは結局載らないことになったが、近いうちにワープブレスレットというのが載る」などがあったと憶えています。
 約二年弱。
 中学校に行くまでの電車の旅の途中、H君をはじめぼくを直接「ウソつき野郎」と罵ってくる人はいませんでしたが、あまりクラスメートと言葉を交わした記憶もありません。
 今ならば。今ならば、あの話をどれぐらい信じてくれていたのか聞けそうな気もするのですが、もし、万が一、来月号の『コロコロ』にワープハットが偶然載ったら、白状損になるので聞けません。
 伊集院さん、「ワープハットで行ったり来たりの巻」は何月号に載るんですか?

1998年7月27日放送分

博士:な……長かったの……。

助手:まあ、はぶられなくてよかったんじゃ?

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西部邁

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