韓国の反日を封じ込める道はある

千年経とうと、韓国は日本に勝てない!ー心温まる朴大統領発言ー

 韓国はその頃から、むろん反日的でした。しかるに一九八〇年代後半のわが国では、「反韓」ブームが起こる余地などなかったのです。「反」も何も、大多数の日本人は韓国に関心を持っていなかったのですから。

 マスコミだって商売です。韓国を叩けば売れると思わない限り、反韓的な記事を載せたり、本を出したりするはずがない。過去三十年足らずのうちに、日本と韓国の距離はそれだけ近くなり、関係も密接になったのです。日本における韓国の存在感が強くなったという表現もできるでしょう。

 これは良いことです。韓国に対して、どんな態度を取ってゆくにしろ、相手のことを知らないとか、関心がないとかいうのでは話が始まらない。反韓を掲げるのが商売になるくらい、日本人が韓国のことを意識するようになった、ないし意識せざるを得なくなったのはポジティブな変化なのです。

 同時に韓国の反日は、憧れや羨望が多分に混じったものであり、鬱屈(うっくつ)したラブコールと評しても過言ではない。考えてもみて下さい。向こうでは十年一日、いや「六十余年一日」(韓国の樹立は一九四八年なので)のごとく反日を叫んで、それが商売になり続けているのです!

 韓国人は、われわれのことがよほど気になって仕方ないに違いない。「反感」や「敵意」の形を取ろうと、ここまで強く相手を意識するのは、もはや恋心の部類に属します。これを端的に示したのが、二〇一三年三月、同国大統領の朴槿恵(パク・クネ)が政府の式典で述べた言葉でしょう。

 日本の植民地統治下にあった一九一九年三月一日、朝鮮では大規模な独立運動が起こっています。政府式典はそれを記念するものですが、大統領はこう語りました。いわく、加害者と被害者という(日本と韓国の)歴史的立場は、千年の歴史が流れても変わることはない。
 わが国の保守派には、この発言に憤激した方もいるようです。とはいえ私は、実に心温まるものを感じました。

 加害者とは定義上、被害者よりも強いものと決まっています。でなければ、そもそも危害を加えることができません。

 朴大統領は、これから千年経とうと、韓国が日本より強くなることはあり得ないと言い切ったのです! 私が韓国人だったら「ふざけるな!」と激怒するところですが、この発言が同国内で大ヒンシュクを買ったという話も聞かないので、たいていの韓国人は異論がないものと推測されます。

 日本の保守派がなぜ腹を立てているのか、あるいは何に腹を立てているのか、私はよく分かりません。朴大統領が「これから千年のうちには、加害者と被害者の立場が入れ替わることもあるだろう」と語ったのなら、「向こうは本気でこちらを圧倒する気だ」と身構えた方がいいでしょう。しかし大統領は、日本との関係において、韓国は今後も被害者、すなわち弱い立場であり続けると断定したのです。

「国籍や国境を越えて誰とでも仲良くしましょう」といった、日本国憲法前文のごとき世界観を鵜呑みにしているのであれば、朴発言に反発しても構いません。大統領の言葉は、被害者意識に基づく執拗な反感がうかがわれる点で、この世界観を否定するものだからです。ただし保守派ともあろうものが、そんなキレイゴトを信じているわけではないでしょうね?

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西部邁

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