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2014年度の5%から8%への引き上げの際は、政府は経済に対する影響は軽微だと宣伝し、4年間の成長率の合計で僅か0.1%しか差が無い豪語していた。菅内閣で経済政策のブレーンを務めた大阪大学の小野善康氏は、なんと消費増税を行ったほうがGDP成長率は上がるのだという珍説を唱えた。実際は我々が厳重に警告したとおり、2014年度の消費増税は経済に深刻な悪影響を及ぼした。
来年度に予定されていた消費増税が実施された場合と延期された場合で実質GDP成長率はどれだけ違うのだろうか。その答えは日本経済フォーキャスター39人(機関)による予測で知ることができる。2017年度の実質GDP成長率は増税が実施されるとして計算されていた5月の予測では0%であっったが、増税延期として計算された6月の予測では0.96%となった。
つまり増税を延期すれば実質経済成長率を約1%押し上げることができることが示された。本格的な経済モデルによる試算で「増税をやっても経済には影響は軽微」だとか、「いや逆に経済成長は加速する」とかという馬鹿な水掛け論争に完全に終止符を打つことができる。
もちろん、1%程度の成長率で満足してよいわけはない。2017年の実質成長率は米国では2.23%、ユーロ圏は1.59%、中国は6.31%と予測されており、まだまだ低すぎる。我々の提案は、増税延期でなく税率を5%に戻す消費減税を行うことだ。先程述べたように、フォーキャスター達の予測(試算)では、8%から10%への消費増税により成長率は0.96%押し下げられる。
逆に8%から5%への消費減税を行ったとしたら、成長率押し上げ効果はその1.5%だから0.96%の1.5倍、つまり1.44%PTだ。それ故2017年度の実質成長率は2.4%との予想となる。もちろん、もっと詳しくは駆け込み需要とその反動、そして予定していた軽減税率なども考慮に入れて詳細に試算する必要があるのだが、5%に消費税率を戻せば失われた20年が終わり、いよいよデフレ脱却に向かうのは明かだし、安倍首相は日本経済を救った英雄として歴史に名を残すことになるだろう。残念ながら、実際は減税どころか3年後には再度消費増税をすると宣言しており、国民の節約志向は続き、これでデフレ脱却ができるかどうか分からない。
政府は今秋にも5〜10兆円の景気対策をやると言っている。これも一回きりなら心許ない。6月19日の日経新聞には安倍首相の経済ブレーンの一人である藤井聡内閣官房参与(京大教授)が「2016年に15〜20兆円の補正を」と大型補正予算の編成を提言している。失われた20年からの脱却ならこの程度は最低でも必要だろう。それでは、財源はどうするのかと必ず聞かれるだろう。
赤字国債を発行すればよいだけだ。しかしそれは将来世代へのツケを残すという心配をする人がいる。7世紀後半、日本最古の貨幣の可能性がある富本銭が発行されて以来、徐々に政府はお金を作って国民に渡している。お金が増えなければ経済は絶対に成長しない。
秀吉や家康の時代は金銀が豊富に産出したから、それで金貨・銀貨を大量に作ることができた。それができなくなった後は、金銀の含有用を減らしながらお金を増やして行って、通貨発行益を政府の財源に組み込み国の借金をむやみに増やし、国民を恐怖のどん底に落とすような馬鹿なことはしなかった。
別な言葉で言えば、1300年以上の間、ヘリコプターマネーで国民にお金を渡すことで、国を発展させ経済を拡大させてきた。平成の大失敗は、通貨発行=悪と決めつけたためにデフレが続き経済の発展を止めてしまったことだ。
小野盛司
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