配偶者控除「103万円の壁」は本当に壁なのか?

ベンチャーサポート税理士法人の森です。

毎年9月、10月頃になると、社長からこういう話を耳にします。
「頑張ってるパートさんが年収103万円を超えるから、働く日数を減らしたいって言ってきてるんだよ」

主婦のパートさんが年収103万円の壁を意識して仕事に入れない。これは経営者としては痛い悩みです。最近は求人も難しいので、優秀な主婦パートさんは大きな戦力です。なんとかならないものでしょうか・・。

年収103万円を越えるとどうなるのか

まず知っておいていただきたいのは、「103万の壁」の意味です。簡単に説明しますと、所得税の計算で年収が103万円を超えると「旦那さんの所得税の計算」で「配偶者控除」が受けられなくなるんです。いわゆる、「旦那さんの扶養から外れる」というヤツですね。

その結果、旦那さんの所得から「38万円」の「所得控除」が無くなります。
「そうかー、税金が上がるのか・・。じゃあ仕方ないな、諦めるしかないか」
となる前にちょっと待ってください。

103万円を超えると、そんなに急激に税金が高くなるのでしょうか?主婦のパートさんは、なんとなく手取りが減ると思っているので仕事を減らしてるのではないですか?

勘違いが多いのが「所得控除」というものの意味です。旦那さんの扶養から外れて38万円の所得控除ができなくなる。この意味は「税金が38万円増える」のではありません。旦那さんの所得税の計算で、課税される「所得」から38万円が控除できなくなるのです。

所得税の計算方法は、「所得×税率-控除額」で計算します。つまり実際の所得税の概算増加額は、「38万円×旦那さんの所得税率」と考えてください。さらに住民税も一律10%かかります。

よって、所得税と住民税を考えた場合は、
38万円×(旦那さんの所得税率+10%)
が税金の負担増の金額になります。
(※実際にはもう少し複雑です)

旦那さんの税率は、本当は家族構成や支払っている社会保険などによって変わりますが、目安としての税率と増税額はこんな感じになります。

年収250万・・・15%→扶養から外れると38万円×15%=5万7千円増税
年収500万・・・20%→扶養から外れると38万円×20%=7万6千円増税
年収750万・・・30%→扶養から外れると38万円×30%=11万4千円増税
年収1000万・・・33%→扶養から外れると38万円×33%=12万5千円増税

実際には奥さんの年収が103万円を超えても、141万円までは緩やかに控除額を減らす「配偶者特別控除」がありますので、増税額はもう少し減ります。ここで知っておきたいのは、扶養から外れても、爆発的に税負担が増えるわけではないということです。

「103万円の壁」より「130万円の壁」

それよりも気を付けないといけないのは、社会保険の扶養から外れる「130万の壁」です。社会保険の扶養から外れると、自分で国民健康保険に加入したり、会社の社会保険に加入する必要があるので、負担は一気に増えます。

このように考えると結論的としては、103万に固執するよりは、130万までは稼いだ方が主婦パートさんは手取りが増えるということですね。

ただし税金や社会保険以外にも注意しないといけないことがあります。旦那さんの会社で「扶養手当」のような名目で、追加の給料が出ていることもあります。これは大きな会社が実施する福利厚生の一環なんですが、「妻の収入が103万未満」を条件にしてることが多いです。これが103万を超えると出なくなる可能性があります。

あと細かい話ですが、公立幼稚園に子供が通ってる世帯は、世帯の合計収入で幼稚園の保育料が決定します。市町村ごとに仕組みが変わりますが、
「○○市 幼稚園 保育料」
で検索すれば各市町村の幼稚園の保育料の計算サイトが表示されるかと思います。念のためにご注意ください。

共働き世帯の数が専業主婦世帯の数を上回って20年。現在では共働き世帯が1077万、専業主婦世帯が720万と、共働き世帯が大きく上回ってます。安倍内閣では、「配偶者控除の見直し」に意欲的です。

例年、秋から税制改正の議論が始まりますので、配偶者控除についてもニュースでも取り上げられるでしょう。税制改正の方向性に注目していきたいと思います。

ではまた来月。

ベンチャーサポート税理士法人

西部邁

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投稿者プロフィール

ベンチャーサポートは、税理士は「サービス業である!」という基本を大切にしつつ、積極的にお客様に貢献できる提案をしていく提案型税理士事務所です。

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