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2015年7月2日、内閣府は経済財政諮問会議に中長期の財政試算を示した。
相変わらず、基礎的財政収支さえよくなれば、経済などどうなってもよいという考えが根底にある。ギリシャの例を挙げて基礎的財政収支を改善すれば財政は健全化するという考えは間違いであるとクルーグマンは主張する。以下彼の主張を引用する。
具体的に考えるために、プライマリー収支の黒字をGDP1%分、恒久的に引き上げると仮定しよう。ギリシャが独自の金融政策を採れないことを所与とすると、プライマリー収支の黒字を達成するには、緊縮策だけでは足りない。実際、歳出をGDP比2%削減しなければならないと考えるのがいい。というのも、財政緊縮によって経済が縮小し、税収が減ってしまうためである。次に、このことは経済を3%縮小させることを意味する。1%のプライマリー収支の黒字を1%ポイント引き上げようとすると、3%景気が悪化するというわけだ。
しかし、経済規模が小さいため、債務の対GDP比は当初上昇する。ギリシャの債務の対GDP比が170%であることを踏まえると、緊縮財政によってプライマリー収支の黒字を1ポイント引き上げようとすると、即座に債務の対GDP比が5ポイント上昇してしまう悪影響が出てくる。このことは、債務の対GDP比が当初の水準に戻るまでだけを考えても5年かかることを示唆している。
(New York Times オンライン反より、みずほ総合研究所作成)
実際緊縮財政で基礎的財政収支の黒字化を達成したギリシャの財政は悪化した。具体的な数字を見ればもっと分かりやすいので次のデータを見て頂きたい。
2010年 2015年
債務残高(10億ユーロ) 329 316
政府債務のGDP比 145% 172%
名目GDP(10億ユーロ) 226 182
基礎的財政収支のGDP比 -5.22 +3.00
確かに緊縮財政で基礎的財政収支は黒字化し、債務残高も減ってきた。これによりギリシャ経済は悲惨な状態となった。失業者は4人に一人、若者では2人に一人だ。GDPは20%減少した。
そのようにギリシャ経済に深刻な悪影響を与えてしまったにも拘わらず、政府債務の対GDP比は2010年の145%から2015年には172%に増えてしまったのである。つまり、ギリシャ国民に貧乏生活を強要したあげく、借金を実質的に増やしてしまったのだ。
緊縮財政で景気を悪くしてしまえば、財政は悪化する。これは日本にもあてはまる。デフレなのに緊縮財政を続けたから失われた20年から抜け出ることができないし、国の借金は増える一方だ。解決法はただ一つ、思い切った減税と財政拡大でデフレ脱却し景気を回復させることだ。
歳出が歳入を大きく上回っているのだから積極財政をやっているのだという錯覚している人がいるかもしれない。それは違う。デフレが続いている限り、財政赤字の規模に関係なく、緊縮財政である。だから更に財政赤字を拡大し、デフレ脱却を目指さねばならないし、そうすれば財政は健全化するし、政府債務も実質的に減ってくる。
小野盛司
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