大阪都構想と『地方消滅』に隠れるシムシティ

皆さん、シムシティというゲームをご存知でしょうか?

私はプレイしたことなかったのですが、先日、地元の読書会で『地方消滅』を課題図書として取り上げた際、参加者の1人の感想にこう書かれていました。

この本を読んでいて、シムシティというまちづくりのゲームを思い出しました。
ビルを作れば、人が増えて、お店作れば売上が増えるといったようなシュミレーションの組まれているゲームですが、そのゲーム的なまちづくりをやろうとしてるんだなぁと感じました。

早速、シムシティを調べてみると、ゲーム内の仮想空間に建物や道路などを作って、町を発展させていくゲームとのことでした。

なるほど、確かにこのゲームの考え方は、『地方消滅』ひいては大阪都構想にもつながっているといえそうです。

人口を再生産するプラットフォーム

『地方消滅』が世間を全国896の市町村を「消滅可能性都市」として発表しました。消滅といっても、突然エイリアンが襲ってきて消え去ってしまうのではなく、2010年の自治体内における人口のうち、20歳~39歳の女性人口が半分以下になることです。

この著書が主眼においているのは、「人口減少をいかにして食い止めるか」ということです。そのために、最も重要なのは出産適齢期である20歳~39歳の女性人口の数になってくるわけです。

もちろん、女性人口が多くとも、出生数が高まるわけではありませんので、保育所の設置などのいわゆる“子育て支援”や雇用の創出のための“政府系機関の誘致”も行うための競争を推薦しています。

ちなみに、この著書をまとめた増田寛也氏はかつて、岩手県知事を務めているころに、地方分権研究会にも参加しており、その後は総務大臣、野村総研顧問、東京大学公共政策大学院教授などを歴任しました。

心に留めて置いていただきたいのは、本書を発行した2014年の夏には東京電力㈱の取締役に就任していることです。

条件さえそろえば成功するのか?

ただ、この『地方消滅』の考え方には致命的な欠陥があります。それは以外にもシムシティを開発したウィルライト氏が著書『シムシティーのすべて』の中で語った言葉に隠れています。

さっき説明したシミュレーションの例では、人口っていう一つの数値をあらわすために一つの式を作ればよかった。ところが、街のシステム全体は式一つであらわせるようなもんじゃない。だから個々の要素が他の要素とどういう関係を持ってるかを一つ一つ式にして、それを組み合わせることによって街全体をシミュレートしようって考えたわけだ。

つまり、複雑に絡み合いながらも、これまで現実の世界で蓄積されたデータをもとにしたシュミレーションが、シムシティの核心です。

だから、保育所を5ヵ所作れば、出生率が0.2%上がることや工場を誘致すれば人口や雇用が生まれることはシムシティでは「正解」であっても、これだけ状況の変化が激しく、世代の価値観やITの技術進歩の速度も早い現代ではそこに生きる人々の価値観は急速に変化し、多種多様です。

つまり、シュミレーションに則ったルールの中で正解を提示することはできても、新しく生まれてきたモノや世代への適応はシムシティのやり方では難しいわけです。

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西部邁

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