朝日新聞に迫る「葬式新聞」化

日下公人

この記事は月刊WiLL 2014年11月号に掲載されています。他の記事も読むにはコチラ

朝日は赤字で変わるか

 朝日攻撃の時代が急に来たかのように、マスコミ各社が朝日叩きに興じている。まさに「水に落ちた狗を打つ」が如きだが、その一人に加わるつもりは全くない。私は、朝日が落ち目になる前からキチンと朝日批判をしてきた自負がある。慰安婦問題についても、私は九六年に『Voice』誌に「『従軍慰安婦』問題の不思議」という文章を寄稿し、売春を前提とした国家による強制連行はなかったと考える理由を述べた。これに対し、当時、朝日的な人々からの編集部への抗議の電話も多数あったらしい。だが、慰安婦に関してはそれ以降、付け加えることは一行もない。

 朝日新聞の危機はどこから来たのかといえば「販売の危機」で、これには朝日も問答無用で対応せざるを得ない。日教組や組合を〝お得意様〟として商売していればいい、という時代がとっくに終わっていたことに気づかなかった。私はかねてより、「日本を変えるのは赤字だ」と言ってきた。役所もそうだが、いくら財政危機を言ったところで、役所は予算を取れるだけ取ろうとするもので「赤字になる」までは観念しないものだ。
 私がそれを思いついたのは銀行での経験で、日本長期信用銀行が潰れるまでの間も、私がいくら「このままでは長銀は危ない」と言っても「まさかそんなはずはない」という声が行内の大半だった。内部留保が五兆円もあったからで、いよいよ赤字になってからではもう手遅れだった。

朝日にも赤字の恐怖が近付いてきたので、小出しに謝ったのがあの八月五日、六日の「慰安婦報道検証」記事であり、九月十一日の社長会見だったのだろう。、朝日新聞が「なぜこのような事態になったのか」を根本から理解せず、小細工での対処を続ける限り、状況は繰り返されるばかりとなる。

 部数減の原因を根本から調査し、部数増の方策を探さなければならないが、朝日がやろうとしたことは根本的な解決とはほど遠いものだった。景品をつけての購読勧誘に押し紙と、販売店に責任を押し付けて、新聞社の社員たちは自ら動かずともできる小手先の対策に走ったが、偏った報道による部数減は広告減でもあった。
 昔は「健康食品などの広告は載せない。広告も記事のうちで、広告も社会を指導する義務がある」と言っていたが、それが「広告なら何でも掲載」になった。それは読者にはすぐ分かった。新聞一部は四十ページだが、そのうちに二十ページが広告になった。

紙面の半分が広告

 しかし、朝日新聞の広告欄には指導性などどこにもなくなってしまった。
 こんなエピソードもある。

 昔の朝日新聞は、不動産関係の広告を掲載しなかった。そこで安心したのかどうか、「不動産業にはインチキが多い」という批判記事を続けて掲載すると、不動産協会から「広告を出していませんで、すみませんでした」という申し入れがあった。その結果、不良業者の摘発は官庁の仕事となって新聞は官庁の尻を叩き、業者からは広告料を取るようになった。これにより朝日は「広告を出さない会社は容赦なく叩くことができる」という自由を捨てた。いまも朝日新聞は大口の顧客である自動車会社の批判ができない。

 いつの間にか、新聞広告は健康食品やお年寄り向けの通信販売で溢れている。これはもちろん朝日だけの現象ではなく、地方紙はもっと悲惨で、死亡記事と葬式や墓の広告で溢れる「葬式新聞化」が起こっている。古い読者にだけサービスしているからこうなるのだが、朝日新聞にも葬式新聞化は迫っている。

 朝日新聞の凋落は広告を見るだけでも分かるのだが、経営悪化を広告で取り戻すという路線を変えられないため、いまも紙面の半分が広告になっている。新聞協会が「広告は五割まで」と抑えているからこの程度で済んでいるが、申し合わせがなければいくらでも増えるだろう。

 広告偏重から脱することができないでいると、そのうちに報道力がみるみる落ちていく。広告のための紙面刷新はあっても報道のための刷新はなく、いまだに日教組、労組などの左翼勢力を頼りにして、彼らが喜ぶような記事を載せている。だが、これからもその路線を続けていくのは無理がある。

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西部邁

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