思想遊戯(10)- パンドラ考(Ⅴ) 水沢祈からの視点(大学)
- 2016/9/13
- 小説, 思想
- feature5, 思想遊戯
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第四項
智樹くんから連絡が来た。いよいよ、新しいサークルが始まる。
講義後に指定された教室へと向かう。
祈「あの、こんにちは。水沢祈です。」
私が教師に入ると、智樹くんが手を挙げて迎えてくれる。隣にいる友達を紹介してもらう。
智樹「こいつは、峰琢磨。同じ学部の友達。」
琢磨「あっ、えっと、峰琢磨です。よろしくお願いします。」
彼が峰くんか。一応初対面なので、挨拶をして雑談して過ごす。しばらくして、残りの2名がやってきた。
一葉「こんにちは。上条一葉です。こっちは、ちーちゃんです。」
上条さんが、もう一人を紹介した。ちーちゃんって…。今までのイメージとのギャップに、私は面食らう。
千里「ちーちゃん言うな! えっと、高木千里です。はじめまして。」
もう1名は、高木さんという方のようだ。高木先輩、か。落ち着いた感じの人だ。上条さんとは違って、この人とは気軽に話せそうな気がする。
サークルメンバー5名がそろった。私たちは互いに自己紹介し合う。
智樹「まあ、今日はサークル発足の顔合わせということで。幹事長は僕、佳山智樹が、そして副幹事長は上条一葉さんにお願いします。会計は峰琢磨が担当です。水沢と高木さんは、無理にお願いして参加してもらっているので、役職とか気にせず、気が向いたときに参加していただけると助かります。」
智樹くんが幹事長としてしめる。私はこれから先の生活に思いをはせる。一癖も二癖もありそうなメンバーがそろったのかもしれない。そんなことを考えていると、高木先輩と目が合った。
祈「あっ、水沢です。よろしくお願いします。高木先輩。」
千里「よろしく。水沢さん。水沢さんは、どうしてこのサークルへ?」
祈「あ、あの、智樹くんに誘われまして。」
私は当たり障りのないように応える。別に嘘は言っていないし。
一瞬だけど、高木先輩の表情に微妙な感情が浮かんだ。私はそれに気づかないようにし、静かに微笑みを返した。
自己紹介がてらの雑談が終わった頃を見計らって、上条さんが提案した。
一葉「それじゃあ、“思想遊戯同好会”の結成を記念して、一つ何かテーマを設定して論じてみませんか?」
さっそく智樹くんが食いつく。
智樹「いいですね。それでは、上条さんは何かありますか?」
祈「パンドラの匣ですよね?」
私の発言に反応し、智樹くんがこちらを見た。私は横目で彼の視線を感じながらも、上条さんを見据えている。上条さんは、私を見て微笑んだ。
一葉「そうですね。パンドラの匣をテーマにして、ちょっと論じてみましょうか。」
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