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政府の景気回復シナリオは崩れた。2013年度、実質2.1%の成長でデフレ脱却が見えてきたとき、2014年の消費増税が一気に景気を悪化させた。2014年度には実質成長率はマイナス0.9%に陥り、今年の4-6月期も前期比マイナス1.2%、7-9月期もマイナス1.3%と2期連続のマイナス成長となった。如何に消費増税が経済に与えた悪影響が大きかったかが分かる。こんな状態で、約1年半後には再度消費増税をやろうというのだから、あまりに経済のセンスがなさ過ぎる。
政府には通貨発行権がある。それは強大な権利であり、それをうまく利用できなかったために政権が滅んだ例はいくらでもある。例えば1333年に鎌倉幕府は滅んだ。幕府の弱体化の遠因は蒙古来襲にある。御家人が戦い、見事に撃退したのだが、鎌倉幕府は武士や御家人に十分な報酬を払えなかった。十分信用できる貨幣を鋳造できなかったからだ。当時使用されていたのは渡来銭といわれる中国銭であり、ユーロを使う今のギリシャのようだったのだろう。元寇の後、御家人の窮乏が目立ってきて、幕府お権威が失墜し、武士や御家人が各地で兵をあげたために、鎌倉幕府は滅んだ。幕府が信用できる貨幣を鋳造できていれば、そしてその価値が失われないよう細心の注意がなされていれば、御家人達に十分な報酬を払うことができ、幕府は滅びなくてすんだ。
残念ながら当時、日本国内で発見されていた銅山は採掘量が急速に悪化しており、市場の要求に応えるだけの良質の貨幣を供給することができなかった。また独自通貨を流通させて経済を発展させようという考えもなかった。更に悪いことに、それより前、708年~963年に皇朝十二銭という貨幣が発行されたが、新しい貨幣が出るたびに、貨幣価値を10分の1に下げたため、日本の貨幣を誰も信用しなくなっていた。
その後金山・銀山が次々発見され、豊臣秀吉はその収益を独占し、金貨・銀貨を作り、それにより大阪城を築くことができ、華麗な安土桃山文化を築くことができた。保有した金は徳川家康に引き継がれ江戸城の築城の資金ともなった。
このように、政権の安定と経済の発展には、国民から信用される通貨を持ち、その通貨の量を徐々に増やしていくことが不可欠である。平成の今、日本の円の価値を疑うものは誰もいない。1万円札をレジに持って行っても、これが果たして本物か、チェックされたことは一度もない。また、100万円をATMで送金したとき、受け取ったお金が本物か偽物か疑う人はいない。日本円の信用は100%確保されているのだ。
そうであれば、デフレ脱却は簡単で、お金を刷って国民に渡すだけでよい。実際、日銀はお金を刷った。刷ったお金(マネタリーベース)は343兆円あり、そのうちの246兆円は銀行口座(日銀当座預金)に、残りは紙幣として金庫に入っている。このカネを借りて使ってくれと政府に言われても、「失われた20年」の真っ最中の日本で、儲かる商売なんてない。やるべきは、政府が国債を発行しこのカネを吸い上げ、減税や大規模な景気対策をすることだ。刷ったお金が減ってくればまた刷ればよいだけだ。国債増発が将来世代へのツケを増やすと勘違いしているのが、国債増発を躊躇する理由であり、国債増発はそれを日銀が買い取るなら、単なる通貨増発であり、将来世代へのツケにはならないことを理解すべきだ。
小野盛司
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