迷走するアベノミクス

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11月8日の報道2001で、アベノミクスに関し様々な話題が出た。そこでインタビューされた一人の女性の声が印象に残った。「消費税が上がり、これから更に上がろうとしている。更に国は借金をたくさんしている。これでは3食を2食にでもしなくては食べて行けない。」と言っていた。これが、国民の声だ。

もし、国民が消費税増税で追い詰められ、3食を2食にしたらどうなるだろう。消費の落ち込みで関連企業は打撃を受ける。それがGDPを減少させ、税収を減らす。税収が減れば、国債を増発して穴埋めせざるを得なくなる。その結果国の借金は更に増え、また借金の対GDP比も増える。国民は増税で節約を迫られるし、節約すればするほど、国の借金は増えるということを国も国民も理解していないようだ。

だけど借金がたくさんあるときに、いっぱいお金を使ったらやがて借金が返せなくなると思う人がいるかもしれない。しかし、借金しているのは政府であり国民ではない。国民が節約すればするほど、国の借金は増える。では国民が思いっきりお金を使ったらどうなるか。やがて国民の持っているお金が無くなってしまうのだろうか。AさんがBさんから何か買ったら、Aさんのお金の保有高は減るが、その分Bさんのお金の保有高は増えるから国民全体で考えれば全体の保有高は変わらない、ただしその取引に拘わる税金は増えるから、国の借金はそれで減らすことができる。つまり、財政健全化のためには、国民に少しでも多くのお金を使ってもらうのがよい。

単に税収が増えるだけではない。国民経済において取引拡大になるのだから、GDPが増える。そうすると国の借金の対GDP比は下がり国の借金は実質的に減る。というわけで、国の借金を減らすにはできるだけ国民にお金を使ってもらって消費を拡大すればよいし、国はそれを手助けすればよい。消費拡大は国民を豊かにするということだ。しかし、安倍首相の行っている政策はその逆だ。消費税を大幅に上げ、近い将来また上げようとしている。これは国民からお金を取り上げ、消費できないようにし国民を貧乏にする政策だ。

安倍首相も黒田日銀総裁も企業に賃上げをせよと命令する。まるで統制経済だ。これにより消費が拡大すると思っているなら大間違いだ。これは減税とはまるで違う。確かに、輸出で稼いだ企業は多少賃上げをするかもしれない。しかし、その他の大部分の企業は、消費税増税で苦しみ、消費の落ち込みで苦しんでいる。そんなときに賃上げなどできないし、真上げをすればするほど企業としての競争力は落ちてくる。また、賃上げで設備投資の余力が無くなり、ますますその企業は没落するしかなくなる。

かつて、イギリスでは労働組合が強すぎて、働くよりストライキをやって賃上げをしたほうがましという風潮が高まって経済が停滞した。普通の国であれば、自国の企業の競争力が失われるため、過度の賃上げを嫌う。国があからさまに賃上げを要請するということは、経済を全く理解していない証拠だ。政府は携帯の料金の値下げも要求しており、まるで統制経済だ。統制経済の失敗の歴史をしっかり勉強して過去の失敗を繰り返さないことが重要だ。

小野盛司

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西部邁

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