ブヨは正しき人間であったが、さらに悲劇に見舞われた。
ブヨは病気に罹り、筆舌に尽くし難い苦痛に苛まれた。
ブヨは、それでも一なる神への信仰を捨てなかった。
ブヨは、病気は直せば良いと言った。
ブヨは、病気の苦しみから立ち上がった。
ブヨの友人が、ブヨを訪ねて来て言った。
「ブヨは、病気を治そうとしている。
しかし、その病気が不治の病だとしても、ブヨはその信仰を捨てないのか。」
ブヨは述べた。
「不治の病でも、この信仰を捨てない。
不治の病だったとしたら、私は信仰を抱えたまま自死を選ぶであろう。」
友人は言った。
「一なる神は、自死を禁じてはいないのか。」
ブヨは述べた。
「一なる神が、不治の病に罹ったものの自死を止めることはない。
それは一なる神の性質に反する。
全知全能全善という性質に反する。」
友人は言った。
「財産を失い、病に倒れたにも関わらず、
何故ブヨは一なる神の信仰を失わないのか。」
ブヨは述べた。
「財産はまた築けば良い。
病気は直せば良い。
病気が治らなければ、自死を選べば良い。
何故に私が私の信仰を失うというのか。」
友人は言った。
「罪がないなら罰はない。
それに反していれば、信仰を捨てることもあるはずだ。
ブヨは正しき人間である。
何故ブヨは一なる神の信仰を失わないのか。」
ブヨは述べた。
「友の心遣いに感謝する。
しかし、私は私の人生を歩む。
不遇も幸運もまた、私の人生の一部である。
何故に私が私の信仰を失うというのか。」
友人は述べた。
「一なる神の意図は知り得ない。
一なる神と議論はできない。
何故ブヨは一なる神の信仰を失わないのか。」
ブヨは述べた。
「私は人間だ。
一なる神の意図は知り得ない。
一なる神と議論はできない。
私は私の人生を歩む。
何故に私が私の信仰を失うというのか。」
友人は言った。
「ブヨの罪は何か。
ブヨの罰は何か。」
ブヨは唱えた。
「罪は人であり、罰は神である。
罪と罰、すなわち、人と神。」
友人は言った。
「ブヨは正しき人間である。
ブヨに正当な評価を。
何故ブヨは一なる神の信仰を失わないのか。」
ブヨは述べた。
「私は正しき人間に正しき評価をしたい。
私は私自身にもそれを望む。
しかし、それでも私は私の人生を歩む。
何故に私が私の信仰を失うというのか。」
友人は言った。
「一なる神と人との間には壁がある。
その壁は、境が見えない程に高い。
何故ブヨは一なる神の信仰を失わないのか。」
ブヨは述べた。
「私と一なる神の間には壁がある。
その壁は、境が見えない程に高い。
しかし、それでも私は私の人生を歩む。
何故に私が私の信仰を失うというのか。」
……………。
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