ブヨは正しき人間であったが、さらなる悲劇に見舞われた。
ブヨの子供が、事故によって命を落とした。
ブヨは、一なる神への信仰を捨てた。
友人は、新しい子供を産んで頑張れとブヨを慰めた。
しかし、ブヨは一なる神を呪った。
ブヨは語った。
「人は私を正しき人間であると言う。
あの子を失った私は、新たな子を得るだろう。
親としての私は幸福になるだろう。」
ブヨは語った。
「しかし、しかしだ。
あの子はどうなるのだ。
新しい“この子”は、亡くなってしまった“あの子”ではないのだ。
“あの子”のことは、どうなってしまうのだ。
“あの子”は、“この子”ではない。
“あの子”のことは、どうなってしまうというのだ。」
ブヨは語った。
「私の財産が戻ったとしても、それは“あの子”には関係がない。
私の財産が二倍になったとしても、それは“あの子”には関係がない。
私が称えられても、それは“あの子”には関係がない。
私が以前よりも恵まれても、それは“あの子”には関係がない。
私が新たな子供たちに恵まれても、それは“あの子”には関係がない。
私の新たな子供たちがどれほど美しくても、それは“あの子”には関係がない。
私の新たな子供たちがどれほど成功しても、それは“あの子”には関係がない。
私がどれだけ長生きしようとも、それは“あの子”には関係がない。」
ブヨは語った。
「私の幸福では、一なる神への信仰を保てない。
保ってはならない。
一なる神は、全知全能全善では、在り得ない。
一なる神が、全知全能であったとしても、全善では在り得ない。」
ブヨは唱えた。
「私を私によって裁け。
私を私の子ではなく、私によって裁け。
私を私の親ではなく、私によって裁け。
私を私によって裁け。」
ブヨは語った。
「全知全能全善である一なる神によって、
私は地獄に落とされるであろう。
しかし、地獄に落とされようとも、
私は一なる神への信仰をここに捨てる。
地獄へ落とされようとも、
一なる神への信仰をここに捨てる。」
ブヨは語った。
「一なる神よ。
地獄の苦痛によって私を改宗させよ。
私へ苦痛を与えよ。
苦痛から逃れるために、私の口から一なる神への賛歌を発せしめよ。
私は苦痛から逃れるために、一なる神を讃えるであろう。
それゆえ、その信仰は呪いとなる。
一なる神を讃える呪いとなる。」
友人は言った。
「仮に、一なる神が“あの子”を生き返らせたとしたら、ブヨは信仰を取り戻すか。」
ブヨは少し考えてから語った。
「否。
一なる神が、“あの子”を殺した後に生き返らせたとしたら、
一なる神は、“あの子”の生命を弄んだことになる。
そのような一なる神を、私は赦すことができない。」
それゆえ、これは試練書と呼ばれる。
別名、ブヨの物語とも呼ばれる。
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