屈辱のAIIB。米国は、中国が覇権国家になるのを止められないのか?

アメリカは、「AIIB」で中国に「屈辱的敗北」!

さて、私は最近ずっと「AIIB事件」の重要性を書いています。

読者さんの中には、「大騒ぎしているのは北野さんだけですよ」などという人もいます。では、フクヤマさんは、「AIIB」をどう見ているのでしょうか?

中国の動きを見ると、国力の増進とともに野望が膨らんでいる状態だ。その好例が、アジアインフラ投資銀行(AIIB)だろう。
AIIBを創設し、そこに出資して、いずれは世界銀行より大きくしようと狙っているのかもしれない。
(中央公論 2015年6月号)

「AIIBを、世界銀行より大きくする」(!!!)

フクヤマさんは、その可能性と展望についてどう考えているのでしょうか?

そうなると、まさに米国の持つグローバルパワーの(中国への)移行の典型的シンボルとなるだろう。
(中央公論 2015年6月号)

この部分を読むと、フクヤマさんは、「アメリカから中国に覇権が移行するのは、『十分あり得る』と思っていることがわかります。

そして、決定的な話に移っていきます。アメリカは、中国がAIIBを作るのを阻止しようとした。

米国はそうした動きを止めようとしたが、屈辱的な敗北を喫した。
結局、主要国でAIIBの創設メンバーに入らなかったのは、米国と日本だけということになった。
(中央公論 2015年6月号)

屈辱的な敗北を喫した。同感です。

フクヤマさんは語っていませんが、それでアメリカは「南シナ海埋め立て問題」を大騒ぎしはじめたのです。

「AIIB事件」について、アメリカは「平静を装って」いますが、中国に完全に負けたというのが本音なのですね。

もちろん、戦いが終わったわけではなく、今アメリカは熱心に「リベンジ」しています。

アメリカが負けたのは、「AIIB事件」の話で、「覇権争奪戦」はまだ始まったばかりなのです。

とはいえ、フクヤマさんご自身は、「もうアメリカは中国に勝てない」と思っているフシがあります。

中国との関係を考えてみると、すでに述べたように、中国がルールを決めていく世界に向うのは避けられない。
中国にはルールを決めていく財力もあるし、パワーもある。それに単純に抵抗しようとするのは、ばかげている。
(中央公論 2015年6月号)

「中国がルールを決めていく世界に向うのは避けられない!!」

これって、別の言葉で、「中国が覇権国家になるのは、避けられない」てことですよね?

なぜかというと、「ルールを決める」ことができるのは、「覇権国家だけ」だからです。(例:冷戦時代、覇権国家アメリカが、西側のルールを決めた。同じ時期、ソ連が共産陣営のルールを決めた。)

→ 次ページ「この記事をどう読むべきか?」を読む

1 2

3

4

西部邁

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 2015-7-24

    ラムズフェルド回顧録

    「真珠湾からバグダッドへ ラムズフェルド回想録」書評  政治家と政治学者。  ともに政治に対…

おすすめ記事

  1. 「マッドマックス 怒りのデス・ロード」がアカデミー賞最多の6部門賞を受賞した。 心から祝福したい。…
  2.  アメリカの覇権後退とともに、国際社会はいま多極化し、互いが互いを牽制し、あるいはにらみ合うやくざの…
  3. ※この記事は月刊WiLL 2015年1月号に掲載されています。他の記事も読むにはコチラ 新しい「ネ…
  4. ※この記事は月刊WiLL 2015年4月号に掲載されています。他の記事も読むにはコチラ 「発信…
  5. 多様性(ダイバーシティ)というのが、大学教育を語る上で重要なキーワードになりつつあります。 「…
WordPressテーマ「SWEETY (tcd029)」

WordPressテーマ「INNOVATE HACK (tcd025)」

LogoMarche

TCDテーマ一覧

イケてるシゴト!?

ページ上部へ戻る