財政健全化には国土強靭化を中心とする積極財政こそがカギとなる

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財政健全化 揺れる方程式 何が正論か

4月18日の日経によれば、政府・与党が6月決定を目指す財政健全化計画の「方程式」が揺れているそうだ。かつては財政健全化と言えば、基礎的財政収支の黒字化のため、どれだけ増税を行い、どれだけ歳出削減を行うかという議論だけだった。しかし、デフレから脱却する前にそれを行えば、景気は更に悪化し、税収は落ち込み、いつまで経っても財政健全化はできない。

そうしているうちに20年が失われてしまった。
実は財政健全化など簡単だ。思い切って減税と歳出の拡大をすれば、デフレから脱却でき景気回復し税収が増え財政は健全化する。

残念ながらこれまで政治家はこんな簡単なシナリオが理解できなかった。そこに電撃的に出てきたのが二階ペーパーで与党の議員の間で出回った。歳出を拡大すれば、経済成長はもちろん、GDPが増え債務残高の対GDP比は減少し、財政が健全化する。国土強靱化の理論的支柱である藤井聡内閣官房参与も同じ主張で西田昌司参議院議員も共鳴する。ここにきて積極財政論者も論戦に加わってきたのは、大変希望が持てる状況が生まれつつある。

もちろん、このような積極財政論が一気に議員の間に広まるはずがない。待ったをかけたのは河野太郎行政改革推進本部長ら行革派だ。

彼の説は「債務残高のGDP比の低下は、たまたま低い長期金利と高成長率の恩恵をうけているだけ。2023年度の先は長期金利の上昇でGDP比は悪化する」というもの。しかし、彼の説に説得力はない。なぜ2023年度の先で長期金利が上がるのか。8年も先の長期金利など予言できる人など誰もいない。

長期金利が上がれば国債価格は下がるし、長期金利が下がれば国債価格は上がる。長期金利を予言できる人は国債価格が予言できるから、下がったときに買って上がったときに得れば良い。つまり、長期金利の予言が正確にできる人は国債の売買で世界一の金持ちになれる。この方法で世界一の金持ちになった人がいないということは長期金利の上がり下がりは、1日後でも、1週間後でも8年後でも絶対に予言できないことを意味する。

「国債が暴落する」ということを我々は耳にたこができるほど聞かされた。

しかし、現在量的緩和でマネタリーベースが302兆円、日銀当座預金が208兆円と天文学的に巨額になっている。国債暴落とは金利暴騰ということだ。例えば金利が10%の国債が市場で売り出されたらどうなるか。巨額のお金は現金、あるいは、0.1%の利子の当座預金に預けてあるのだから、10%もの金利の国債が売り出されたら、買い手が殺到するのは間違いない。

買い手が多ければ売り手はそのような高い金利をつけなくても売れることを知り、たちまち金利は0.3%程度に下がってしまう。つまりマネタリーベースが302兆円もある状況では金利は暴騰しようがない。

河野太郎氏のもう一つの間違いは、金利が上がれば政府の利払いが増えて債務のGDP比が上がるとしていることだ。実際は、現在の異次元の量的緩和が進めば、国債の多くの部分を日銀が保有することとなり、政府の利払いは日銀に行き、それは国庫納付金として国庫に返ってくる。だから財政は悪化せず、債務のGDP比にも大きな影響はなくなる。

このような全く信頼性を欠く予言に基づいて歳出を削減せよという河野太郎氏の主張は全く受け入れられない。

小野盛司

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