食糧自給率の低下って本当に問題ないの?~自給率と食糧安全保障について~

さらに、国連FAO「食糧需給表」で発表している穀物自給率で見ると日本はなんと27%であり(穀物自給率は、先進国平均108%、開発途上国平均92%)、危機的水準といえます。

では、このような低い食糧自給率は本当に問題なのでしょうか?高橋洋一氏は、コラムの中で、食糧自給率目標は農業政策の目標としては適切でないとして次のような意見を述べています。

 常識的に考えても、今は飽食の時代であり、それを前提にした自給率にあまり意味があるとも思えない。 食糧安全保障ということもいわれるが、食糧危機は他のエネルギー危機と比べて起こりにくくなっている。食糧危機については、しばしば経済学者マルサスの人口論が引用される。人口は等比級数的に増えるが、食糧生産は等差級数的にしか増えず、食糧危機は必然になるというものだ。

 もっとも、これまでのところ、食糧生産も人口に見合っただけ伸びてきており、一部の国を除くと世界的な食糧危機にはなっていない。

 もちろん、今後食糧危機があり得ないとは断言できないが、それよりも自給率4%に過ぎないエネルギーのほうが問題であろう。

(食料自給率「39%」のカラクリ 国際標準でないカロリーベースhttp://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20140809/dms1408090800002-n1.htm

一見、もっともらしい意見にも思えますが、よくよく検討してみると全くナンセンスな意見であると理解できます。まず、第一に飽食の時代であるから自給率は関係ないとは必ずしも言えません。そもそも、(あらゆる安全保障がそうであるのですが)食糧安全保障とは基本的に食糧危機に対応するための考え方や政策であって、通常時に食料が足りているか、足りていないかは関係ありません。さらに飽食であると言っても、それは海外からの食料品の輸入によって支えられているため、飽食であるから問題ないとは言えないでしょう。

さらに、高橋氏は、このコラムの中で、日本の食糧自給率は国際的にスタンダードな指標である生産額ベースの自給率で見るなら、70%近い自給率なので大丈夫であると説明していますが(ちなみに、現在は65%)、家畜の飼料などを海外からの輸入に頼っている日本では、ひとたび食糧危機が発生し、穀物の輸入が出来なくなれば、家畜の育成すら困難になる可能性があり、これまた必ずしも生産額ベースの自給率が高ければ問題ないとも言いきれません。ちなみに、生産額ベースの自給率は国内で富裕層向けの高価な食品を中心に生産していくと高くなるので、やはりこの点からも、食糧安全保障を考える上では、生産額ベースの自給率が高ければ安全とは言い難いでしょう。

また、氏は「もっとも、これまでのところ、食糧生産も人口に見合っただけ伸びてきており、一部の国を除くと世界的な食糧危機にはなっていない。」と述べていますが、現実には、2007年-2008年には世界食料価格危機が発生しており、世界の食料価格は劇的に上昇し、国際的な危機の状態をもたらし、貧しい国や開発途上国において、政情不安、経済不安と治安悪化を引き起こしました。

中国やブラジル、インド、インドネシア、ベトナム、カンボジア、エジプトなど主要なコメ輸出国は国内の需要を満たすためコメの輸出に厳しい規制を課し、逆にアルゼンチン、ウクライナ、ロシアとセルビアを含むいくつかの国では小麦や他の食料の輸出に対し高い関税を課したりブロックするなど市場の孤立化に努めたため、輸入国はさらなる食料価格の上昇に見舞われました。つまり、危機の状況では、各国が連鎖的に輸出に規制をかけたり、あるいは投機による価格高騰が発生するので価格高騰や危機が加速します。さらに、現在では中国、インド、ブラジルといった農作物の輸出国が輸入国になろうとしており、今後は、ますます食糧安全保障の重要性は高まっていくことが予想されています。

「自給率4%に過ぎないエネルギーのほうが問題であろう。」という指摘も全くナンセンスで、エネルギー安全保障が重要であるからといって、食糧安全保障を軽視してよい理由には全くなりません。これなどは、ほとんど論点ずらしの詭弁と言ってよいのではないでしょうか?

以上、いくつかの観点から日本の食糧安全保障は危機的な状況にあり、今後より食糧安全保障を強化する観点から農業政策を考えるべきであると結論できるでしょう。が、残念なことに、現在の日本の農業政策はこれとは全く真逆の政策を打ち出しているように思えてなりません。ですので、次回は、今回の論点を踏まえたうえで、現在の政府の農業政策が如何に問題を含んでいるか等々の問題について解説したいと思います。

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西部邁

高木克俊

高木克俊会社員

投稿者プロフィール

1987年生。神奈川県出身。家業である流通会社で会社員をしながら、ブログ「超個人的美学2~このブログは「超個人的美学と題するブログ」ではありません」を運営し、政治・経済について、積極的な発信を行っている。

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コメント

    • 灯火
    • 2015年 4月 28日

    初めてコメントさせて頂きます。
    私も高木さんの意見に賛成です。

    ロシアやイランが経済制裁を耐え抜けたのは、食糧とエネルギーが確保出来ていたからです。
    食糧不足だと、国はどうなるか。
    北朝鮮のようになることでしょう。

    日本は70年前より、更に、他国依存が進み、他国に生殺与奪の権を握られかけています。

    せめて、食糧だけでも自給率を上げて、国家国民の安全安心を確保するべきでしょう。

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