弱者切り捨ての経済政策は本当に合理的なのか

日本は平成に入って、特定の産業や団体をみんなで血祭に上げてきた

中野 気に入らないのは、日本人一般、とりわけですね製造者とか輸出企業に勤めている人たちって、単純に言えばですよ、農業を犠牲にしたら輸出が伸びるかもしれないって思ってるわけでしょ。つまり、他人が苦しんで、他人が痛みを伴って、それで自分が楽になるかもしれないって、こう思ってるワケですよね。これ、小泉構造改革からずーっとその路線なわけですよ。

「郵政が悪い」「官僚が悪い」「自民党が悪い」「土建が美味しい汁を吸ってる」
そこを叩けば効率性が良くなるって言って、ずーっと叩き続けたわけですよ。その間、日本人って誰かが美味しい汁を吸ってるかもしれないけど、そいつらが叩かれて犠牲になれば皆が楽になるかもしれない。そこで失業者が出ても、それは企業努力が足りなかったんだ。効率性が悪いんだから淘汰されて当然なんだ。非効率な奴らはおかしいんだ、足を引っ張ってるだけなんだから、って、こうやってきたわけですよ。

でも、そういうのは、まず道徳の問題として不道徳なんですけど、それ以前にですね、そんなことやってると必ず報いがくるわけですよ、つまりデフレ。今言ったのと同じで、農業を叩くと必ず輸出が伸びて自分たちは楽になるかもしれないからTPPに賛成しておこうって判断している製造業、輸出企業の労働者はデフレに巻き込まれ、次にTPPで移民にやられて自分たちが失業するんですよ、で賃金も上がらないんですよ。だから、他人を潰して自分が楽なろうとした報いが必ず来るんですよ、ざまあみろと。

つまり、ここもコモンセンスの問題で、余計なこと考えなくても、他人をね、他人が苦労して自分が楽になるって考えちゃいかんって、僕、おふくろにはそう習ったことあるんですけど、なんでそんなことも分からないのかと、さらにですよ、もっと極論を言えば、なんで、たかだか非効率だってくらいで路頭に迷わなきゃいけないんだよ?と、おかしいだろうと。

だって、皆さんもそうかもしれないし、僕の近所だって、僕の親戚だってそりゃあ働いてますよ。だけど、そりゃあデフレで色々あるし、能力の問題だってあるから、一生懸命働いてたって効率性なんか上がらないですよ。非効率だけど真面目に働いて家族養って、子や孫養って貯金してるんでしょ?なんで、それが路頭に迷わなきゃいけないんだよ。おかしいだろうと、そういうことがですね皆さん拍手してますけど、そういうことがここ10年20年そういう論理で誰かを叩き続けてきたんだぜ、おかしいじゃないかと。

筆者は、中野剛志さんの大ファンなのですが、じつは、この演説は筆者が中野剛志さんのファンになったきっかけの動画であり、なんというかまあ非常に感動的で胸に響く演説ですので、ぜひネットの動画でも話を聴いてみてほしいと思います。

後半では、いわゆる弱者切り捨てや、非効率部門の淘汰という問題に関して道徳的な観点からの批判を試みています。

保守思想家のコールリッジは、政治や国家の役割の一つとして、国民に健全な道徳観を持たせ、健全な精神を涵養させることを挙げていますが、中野剛志さんが説明しているように、日本は平成に入って20年間、効率化、非効率部門の淘汰という名目で弱者切り捨てや、あるいは特定の産業や団体をリンチにし、皆で血祭りに上げてきたわけです。その結果、経済は長期のデフレ不況に落ち込み、さらに国民の精神状態はといえば、真っ当なコモンセンスは失われ、かつての日本人が持っていたであろう健全な労働倫理は完全に崩壊させられてしまいました。

現在、安倍首相は、経済最優先の政策を掲げ、様々な分野の経済規模を拡大し、海外からの投資を受け入れ、経済を成長路線に戻し、ビジネスチャンスをどんどん拡大させていきたいと主張しています。しかし、そのような政策は本当の意味で国民を幸せにするのでしょうか?あるいは、ビジネスの上手い人間にどんどん活躍の場を与え、そのような金儲けの特別な才能をもった極々一部の人間に国家のリソースを集中的に注ぎ込むような政策のもとで、国民一人ひとりの健全で真っ当な精神を養う事が可能なのでしょうか?

むしろ、経済をあえて保守的な観点から語るのであれば、何か誰か特別な才能の持ち主にたくさんのリソースを投入することで高い経済成長を目指し、国民のチャレンジ精神を鼓舞するのだ。などといったある意味で浮ついた政策目標を掲げるのではなく、むしろ国民一人ひとりが真面目に働き、自分の属する企業や社会に貢献をする、あるいは家庭を持つ人であれば、真面目に働いて家族を養っていく。そのような地に足のついた落ち着いた生活の中に価値を見出していく中で健全な道徳観や労働倫理を国民一人ひとりが持てるようにしていくことを目的とすることこそ、保守の持つべき真っ当な経済観、国家観に適合する政策なのではないでしょうか。

最後に一つ付け加えますと、以上のような観点から考察するならば、現在の安倍首相が行おうとしている政策の多くは、残念ながらあまり優れたものであるとは言えないと思います。特に、アメリカ主導のTPPはもちろんのこと、非常に重要な国家や国民生活の社会基盤を破壊させるような安易な改革案も問題ですし、あるいは、質の高い労働倫理を養うためには適正な労働基準が課されることが重要だと思いますが、それらの規制を全て取り払い、何もかも経営者本位で、しかも経営者がお金儲けをしやすくするためだけのルールを設定するような経済特区の設置も労働者や、さらには経営者の精神までも荒廃させてしまうのではないかと思い、個人的には非常に危惧しています。

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西部邁

高木克俊

高木克俊会社員

投稿者プロフィール

1987年生。神奈川県出身。家業である流通会社で会社員をしながら、ブログ「超個人的美学2~このブログは「超個人的美学と題するブログ」ではありません」を運営し、政治・経済について、積極的な発信を行っている。

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コメント

    • 自由主義者
    • 2013年 11月 13日

    非効率(無能)でも効率(有能)でも同じ収入なら、悪平等じゃないですか。共産主義ですよ!

    頑張ってもサボっても同じ。ヤル気がなくなる。

    天才が失業するより、バカが失業するほうが良い。

    例えば、同じ品質のネジを一日に10個作れる奴と100個作れる奴がいれば、両者が同じでは有能な人が損する。

    人材流出する。勤労意欲が無くなる。

    能力に応じて収入を得るのが勤労倫理であり、無能も有能も平等、これは共産主義思想。

    そもそも、官僚・郵政・自民党・土建屋が製造業や輸出業の労働者を搾取するのは正義で、その逆は悪と、この中野という天下り官僚は言ってるけど、職業差別じゃないですか。

    甘い汁吸うってことは、税金を 搾取 して、働いている人の富を奪って、 イジメ を行っているんですよ?

    天下り官僚や郵政や自民党や土建屋による、製造業労働者・輸出関係者・納税者への「集団リンチ」を罰するほうが先でしょ!

    • 反官
    • 2013年 11月 13日

    改革派(経済右派)は「悪平等な分配を止めろ」と言ってるだけで、非効率な人間は死ねとは言っていないでしょう。
    非効率な人間には、それが怠惰によるものならば、改めていただく。無能力によるものならば、頑張って研鑽していただく。
    いずれにせよ、能力や成果に見合った取り分で我慢すべきであり、1の成果しかあげれない者が10の報酬を受け取るのは、搾取である。
    味噌糞いっしょという再分配は、努力や能力を否定するマルクス経済学であるといえる。

    • でうい
    • 2014年 2月 17日

    こういった場所でもでるんですね 
    やれ「キョウサンシュギシャがー!」とか「マルクスシュギシャガー!」と騒ぎ出す人たちが。

    上記のようなコメントを残している方々は本文をちゃんと読んでいるのですか?

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  1. 2014-8-6

    経済社会学のすゝめ

     はじめまして。今回から寄稿させていただくことになりました青木泰樹です。宜しくお願い致します。  …

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