弱者切り捨ての経済政策は本当に合理的なのか
- 2013/11/11
- 経済
- 中野剛志
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もちろん、TPPで日本の農業が全て壊滅することはないでしょう。確かに、日本の農業でも高い競争力を持つ分野は存在します。しかし、それは野菜や果物など、味や鮮度が非常に重要でなおかつ耕地面積の大きさによってそれほど価格や生産性の優劣が左右されない一部の限られた分野であり、やはり、それ以外の農業のうち多くの分野では大変な打撃を受けるでしょう。海外からの農作物の輸入攻勢により、国内の農業が打撃を受け失業する農家が増えれば、当然、すでに低い状態の食料自給率がさらに低下します。今後数十年スパンで発生することが予測されている世界人口の増加と食料問題を考えるのであれば、一部の高付加価値の農作物や高い競争力を持つ工業製品の輸出額がほんの僅かに伸びるかもしれないという希望的観測のもとに、国内の農業を痛めつけ、食料自給率を低下させることが自明であるようなTPP参加という戦略をあえて選ぶというのは、あまりにも国家の防衛意識が欠如しているようであり、もっとありていに言えば国家的な自殺行為とみなしてよいのではないでしょうか。
また、移民の問題も深刻です。一般に言われる言説として、
「日本は将来生産年齢人口の数が減り、移民の受け入れをしなければ国力が低下する」
というもののほかに、
「すでに日本では安い賃金で働いてくれる外国人労働者なしには成り立たないような産業が数多く存在している。だから移民がいなくなればそういった分野の産業が潰れてしまう」
というものがあります。もちろん、そのような説明に全く理がないとは申しませんし、私は、かのヘイトスピーチで有名な右翼団体のように
「在日の移民を国外に追放しろ!!」
などと過激な発言をするつもりもありません。
しかし、ふと落ち着いて状況を見てみると、低賃金の労働者を大量に受け入れ、ワーキングプアの外国人労働者を大量に発生させることがデフレを悪化させ、そこから発生したデフレ状況こそが、特定の産業を安い賃金の外国人労働者なしではやっていけないようなある意味でブラックに近いような体質にしてしまっている状況もあるのかもしれません。つまり、低賃金の外国人労働者がデフレを深刻化させ、デフレが深刻化することでますます大量の外国人労働者を受け入れる必要が生じているのかもしれないのです。
そのような状況を踏まえ、長期的な問題解決を目標とするならば、
「低賃金でこき使える外国人労働者なしには、成り立たない産業があるので、もうどんどん外国人労働者を受け入れてしまおう」
と考えるよりも、むしろ、
「国内経済全体の状況を改善しながら様々な労働環境を整備し、海外からの移民の低賃金な労働力依存する戦略を見直そう」
と考える方が良いのではないでしょうか、
「低い給料でこき使える外国人労働者を使って利益を拡大してやろう」
などと考える不逞な輩は論外ですが、また同時に、
「どうしても、安い賃金で長時間働いてくれる外国人労働者なしには、商売をやっていけない」
と考えている経営者にとっても、後者の考え方を見直すことがジリ貧的な経営状況から脱するための助けになるかもしれません。
コメント
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非効率(無能)でも効率(有能)でも同じ収入なら、悪平等じゃないですか。共産主義ですよ!
頑張ってもサボっても同じ。ヤル気がなくなる。
天才が失業するより、バカが失業するほうが良い。
例えば、同じ品質のネジを一日に10個作れる奴と100個作れる奴がいれば、両者が同じでは有能な人が損する。
人材流出する。勤労意欲が無くなる。
能力に応じて収入を得るのが勤労倫理であり、無能も有能も平等、これは共産主義思想。
そもそも、官僚・郵政・自民党・土建屋が製造業や輸出業の労働者を搾取するのは正義で、その逆は悪と、この中野という天下り官僚は言ってるけど、職業差別じゃないですか。
甘い汁吸うってことは、税金を 搾取 して、働いている人の富を奪って、 イジメ を行っているんですよ?
天下り官僚や郵政や自民党や土建屋による、製造業労働者・輸出関係者・納税者への「集団リンチ」を罰するほうが先でしょ!
改革派(経済右派)は「悪平等な分配を止めろ」と言ってるだけで、非効率な人間は死ねとは言っていないでしょう。
非効率な人間には、それが怠惰によるものならば、改めていただく。無能力によるものならば、頑張って研鑽していただく。
いずれにせよ、能力や成果に見合った取り分で我慢すべきであり、1の成果しかあげれない者が10の報酬を受け取るのは、搾取である。
味噌糞いっしょという再分配は、努力や能力を否定するマルクス経済学であるといえる。
こういった場所でもでるんですね
やれ「キョウサンシュギシャがー!」とか「マルクスシュギシャガー!」と騒ぎ出す人たちが。
上記のようなコメントを残している方々は本文をちゃんと読んでいるのですか?