日本は寛容?不寛容? ―渋谷区「パートナーシップ条例」について考える

同性愛は日本の伝統である

 東京都渋谷区は、同性カップルを「結婚に相当する関係」と認めるパートナーシップ証明書を発行する条例案を区議会に提出しました。

 日本には、同性カップルに夫婦と同じ権利を保障する制度は、今のところ存在しません。そのため、同性カップルが「賃貸の契約ができない」「パートナーが緊急入院した際に面会ができない」などのケースに直面することがしばしばありました。今回の条例案は、そうしたケースに対処するためのものです。

 私は以前「女装保守の誕生」と題する文章を寄稿し、その中で自らがLGBT(性的少数者)であることをカミングアウトしました。
 はじめに、今回の条例案に対する私の考えをはっきりと述べさせてください。
 私はLGBTとして、今回の渋谷区の条例案を歓迎します。

 今回の条例案は、同性カップルを「結婚に相当する関係」と認めるだけであって(よく誤解されがちですが)「同性婚」を認めるものではありません。その点、同性婚を法的に認めるべきと考える私としては、正直「生ぬるい」(!)とすら感じられるほどです。

 しかしながらこの「生ぬるい」条例案にも、保守派は強く反発しています。
 3月10日、保守派の市民団体「頑張れ日本! 全国行動委員会」が渋谷駅前にて条例案への抗議運動を行いました。
 抗議の主な理由は「日本の伝統的な家族観が破壊される」というものです。

 こうした意見に、私は反論したい。

 彼らのいう「伝統的な家族観」とは近代以降の、比較的新しいものに過ぎず、日本の長い歴史を振り返ってみると、同性愛はむしろ日本の伝統であることが分かるからです。
 最も広く知られている例は、武家社会における「衆道」(同性愛)の風習でしょう。豊臣秀吉のような一部の例外を除いて、戦国武将はごく普通に衆道を嗜んでいました。誰もが知っている有名な武将、武田信玄や伊達政宗にいたっては、衆道相手に宛てた手紙が現存しているほどです。
 この他にも、江戸時代、男娼が売春する飲食店「陰間茶屋」が人気を博していたという例があります。

 このように、日本史における同性愛の例は枚挙にいとまがありません。同性愛は決して日本の伝統から逸脱するものではない。むしろ、同性愛こそ日本の伝統だったのです。

→ 次ページ「日本は寛容? 不寛容?」を読む

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西部邁

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コメント

    • 山崎灯理
    • 2015年 3月 18日

    いずれ機会があったら話したいと思っていたけれど、よく考えもせず、こういうことを書いちゃダメですよ。

    1そもそもこれは当事者にとってほんとうに必要なことなのか?LGBTのうち、同性愛はレズビアンと芸だけではないですか?それがなぜLGBTの権利という話になるのですか?
    2わが国に同性愛差別がなかった、というわけではなく、それ以前の封建制という、この上ない「差別」情況があった。
    パキスタンで女性首相が誕生したからといって、彼の国ではわが国よりも女性の社会進出が進んでいる、とか言えない。それとおなじこと。
    3入居困難者は何も同性カップルだけではない。自助団体のHPなどに行けば容易く確認でkますが、独居老人や若夫婦も同じ。
    4家族ではないから面会できない、という状況は、普通の内縁関係度も同じ。
    6そもそも相続などに対処するために同性愛者は昔から養子縁組を使ってきた…例\カエサルとオクタヴィアヌス…わけだけれども、それでなぜ行けないのか?我が国の過去を持ち出すなら当然それも視野に入れなければならない、と思うけど?

    以上、問題と思うところを書きました。良かったらアスリードに問い合わせて連絡をください。ゆっくり話をしましょう。

    • 旅丘
    • 2015年 4月 08日

    今の世の中、「自分はマイノリティなんですぅぅぅぅっ!」て言って被害者ぶれば何でもかんでも通っちゃいますね。

    子供ができない同性カップルを制度上も結婚と同じように扱おうとか、果ては結婚を認めようとか、やっぱりおかしいと思います。

    あと、日本の文化の話では、日本は子孫の繁栄を重んじてきた文化であり、その点からも今回の条例は相容れない制度だと思います。

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