保守こそ本当の反日になれ

保守よ、「愛国の反日」を目指せ

 裏を返せば、反日が影響力を持つ背景には、「日本は道義的に劣った『悪い国』だ」という主張にもっともらしさを与えてしまう素地があるはずです。何だかお分かりですね? しかり、第二次大戦をめぐる評価です。

 同大戦については、「連合国=勝者=善、枢軸国=敗者=悪」という図式が、国際的に定着しています。しかるに日本は、枢軸国の中で最後まで戦い続けた国であるにもかかわらず、ドイツと違って本土決戦を回避しましたし(沖縄は例外ですが、これについては脇に置きます)、国土が分断されることもなかった。

 まして戦後は、冷戦の恩恵をこうむる形で、アメリカの同盟国、ないし子分となって経済大国に。早い話、「往生際が一番悪かったくせに、さほど痛い目にあわずに済んだ」国なのです。本当は何も反省していないのでは、そう疑われるのも無理からぬ話と評さねばなりません。

 あまつさえ日本(人)自身、「連合国=勝者=善、枢軸国=敗者=悪」の図式に寄りかかってきました。「戦前のわれわれは悪の道に迷い込んでしまいましたが、敗戦によってみずからの過ちに目覚めたあとは、善の道を歩むべく努力しております」という形で、安易な自己正当化を図ったのです。

 これでは「過去の悪」など、「現在は善だ」という結論を導き出すために利用される枕詞、またはダシにすぎません。いかんせん、小ずるくセコい論法です。そのせいで「本当のところ日本は何も反省しておらず、ゆえに道義的に劣った悪い国だ」という発想が、ますます説得力を持ってしまう次第。

 反日の影響力、それは戦後日本(人)が取ってきたセコい態度のツケでもあるのです!反日を克服するには、われわれ自身のセコさをまず克服しなければなりません。

 日中戦争や太平洋戦争も、それなりの正義や理想をもって遂行されたものであり、したがって「連合国=勝者=善、枢軸国=敗者=悪」の図式を(少なくとも全面的に)受け入れるわけにはゆかない! こう毅然と主張することが必要になるでしょう。ところがここから、興味深くも厄介なパラドックスが生まれます。

 戦後日本の繁栄は、戦前を安易に否定するセコさの上に築かれました。その限りでは、セコい態度を維持し続けることが、国益を守ることにつながる側面もある。だいたい日中戦争や太平洋戦争にも、それなりの正義があったと主張するのは、どちらの戦争についても(従来のようには)反省しないと言うに等しい。

 反日を克服しようとすることは、国益を損ねる側面があるばかりか、反日を主張したがる者たちに絶好の口実を与える結果にもつながりかねません。日本を「道義的に劣った悪い存在」とみなしたがる傾向は、いよいよ強まるかもしれないのです。

 ——そこまでのリスクを冒しても、克服する必要があるのか? じっと反日に耐えた方が、結局は賢いのではないか?
 こんな疑問、ないし反論も寄せられることでしょう。答えは、むろん以下の通りです。

 自国の過去を「悪」として切り捨てたばかりか、同様の非難を自分たちが受けても、耐えるだけでやりすごそうとする国(民)は、そのセコさ、プライドのなさにおいて、「本質的な点で、他国(民)より一段劣る存在」とみなされても仕方ない存在である!

「堂々たる正論だ!」
 そう感心して下さったアナタ。もう一度、よく読んで下さい。この主張の論理構造は、道義性にかかわる本質的な点において、日本をほかの諸国より低く位置付けており、「本当の反日」の定義を満たしています。

 日本人のセコさやプライドのなさについて、半永久的なものだとまでは決めつけていないだけ。これにしたって、「今のままなら永遠に劣ったままだ」という暗黙の含みを読み取ることは不可能ではありません。

 反日を克服するには、日本人、わけても保守派が反日にならねばならないのです! まさしく「日本を主語とするパラドックス」ですが、さもなければ戦後レジームからの脱却など望むべくもないでしょう。

「毒をもって毒を制する」ならぬ、「反日をもって反日を制する」。わが国の保守を達成する道は、「愛国の反日」とも呼ぶべきものによって敷き詰められているかもしれないのです。

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西部邁

佐藤健志

佐藤健志評論家・作家

投稿者プロフィール

1966年東京生まれ。東京大学教養学部卒業。1989年、戯曲『ブロークン・ジャパニーズ』で文化庁舞台芸術創作奨励特別賞を受賞。作劇術の観点から時代や社会を分析する独自の評論活動で知られる。ラジオDJ、漫画原作、作詞も手がける。著書に『僕たちは戦後史を知らない』(祥伝社)、『夢見られた近代』(NTT出版)、『バラバラ殺人の文明論』(PHP研究所)、『本格保守宣言』(新潮新書)、『震災ゴジラ!』(VNC)、『国家のツジツマ』(共著、同)、小説『チングー・韓国の友人』(新潮社)など。訳書に『新訳 フランス革命の省察』(エドマンド・バーク、PHP研究所)、『コモン・センス完全版』(トマス・ペイン、同)がある。
公式サイト「DANCING WRITER」 http://kenjisato1966.com/

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