フランツ・カフカは妹萌えを100年先取りしている
- 2014/12/22
- 思想, 生活, 社会
- 25 comments
善意同士の関わりが、悲惨な状況を招く。あると思います!
死ぬ直前の主人公と家族はさらに悲惨の状況になっていきます。もはや、完全に兄の存在が疎ましくなっていた妹は、部屋の掃除もおざなりになってきて、ホウキで適当に床を掃くだけになります。主人公は「なんて掃除の仕方だ!!まるで豚小屋の掃除のようじゃないか!!」と憤るのですが、その憤りを伝える手段もありません。この辺りから、年老いた肉親の介護を連想させるようなシーンになります。
世話をする側は気力も体力も奪い取られ精根尽き果てながらも必死に面倒を見る、しかし、世話を受ける方からすると、あまりにもおざなりな対応に不機嫌になる。どちらが悪意を持っているわけでも、悪いわけでもないのにお互いに不幸になっていく、もはや、序盤から中盤にかけての滑稽さはなくなり、ただひたすら陰鬱なシーンが続きます。
その後、見かねた母が、妹の代わりに、部屋掃除のために水を撒きますが、ここで妹は母親に激怒します。「なんで、母さんが兄さんの部屋を掃除してるのよ?!兄さんの面倒は私が見るって言ったじゃない!!これまでだってずっと私が世話してたじゃない!!」完全に面倒のみかたもおざなりになっていたのに、いざ母親が手助けしようとすると激怒する。明らかに理不尽な怒り方なのですが、ここまで読み進めていくとなぜか不思議と、この妹の怒りがスッと自然に受け入れられるんですね、「ああ、確かにこのような状況になってしまったのなら妹は怒っても仕方ないな」と。
主人公が死ぬ前の最後のエピソードで、気難しい下宿人が出てきます。兄の稼ぎが無くなったので、少しでも生活費の足しになればと、一家は家の中の空いた一室に下宿人を住まわせていたのですが、ある日、虫になったグレゴールザムザが、この下宿人に見つかり、下宿人は激怒します。「一体何なんですか?この巨大な虫は!?こんな気味の悪い生き物が住み着いているなんて聞いていませんでした!!今すぐ損害賠償を請求しましょうか?とにかく、こんな気味の悪い生き物のいるなんてことを隠されていたんですから、これまでの家賃だって絶対に払いません!!」困り果てた一家は、この巨大な虫の存在を嘆きます「ああ、この虫さえいなければ、こんなことにならなかったのに!!」もはや、ここまでくると、それまで一家をたった一人で支えてきてくれた恩などどこにもありませんし、もちろん、かつて家族の一員であったこの兄への愛着などもとっくに消え失せて、あるのは憎しみと疎ましさだけです。
前述のように、主人公は、父親に投げつけられたリンゴの傷から身体が腐っていき死にます。主人公が死んだ後の家族は実に晴れやかな気分になります。主人公が死んだ朝族は勤め先に休暇届けを出してそろって郊外に出かけるのですが、そのラストシーンをカフカはこう描いて小説を終えています。
やがて3人そろって家を出た。もうここ何ヶ月もいっしょにそろって外へ出たことなどなかったのだ。彼らは電車に乗って、郊外へ出かけた。ほかに相客のない車室には、暖かい陽射しがいっぱいに差し込んであふれている。3人はすわり心地よく座席へゆったり背をもたせかけて、将来への希望などをいろいろ語り合った。(中略)
3人でそんなことを話し合っている間にも、ザムザ氏とザムザ夫人とは、だんだん生き生きと快活になってくる娘の方を期せずして眺めやりながら、この娘にもかわいそうに一時は頬から血の気がすっかり失せるほど苦労をさせたが、どうやら最近はまた豊満な、美しい娘ざかりの姿へ立ち戻ってくれたものだ、という感慨がほとんど同時にめいめいの胸に湧き上がってきた。すると夫妻は言葉すくなになって、お互いのまなざしだけで暗黙の了解をとりかわしながら、ひとつ、これからは娘のためにりっぱな男を見つけ出してやらねばなるまい、と考え込んでいた。
さて、いよいよ電車が行楽の目的地へ着いたとき、娘はいちばん先に立ち上がって、その若い肉体をしなやかに伸ばしたものだ。その美しい姿が、新しい夢と、善い意図をしっかり保障してくれるように夫妻には思われた……。
このラストシーンは、介護の物語としては絶対に描けない秘密の部分ではないでしょうか?精神をギリギリにすり減らすまで疲弊した介護者にとって、介護する相手の死は、悲しみであると同時に、恐ろしいほどの苦労や苦悩からの解放でもあります。
ある意味では、この作品は家族間、あるいは人間同士の間にある残酷さ、無常さ、恐ろしさをカフカなりの一流のユーモアや諧謔を交えて表現した作品なのかもしれません。
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コメント
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文にまとまりがないので、読んでて分かりにくかったです。そんなんだから倉山スレで馬鹿にされるのですよ。
家族があることは、素晴らしいけれども、こういった現実は至る所であるように思えます。
安易な家族万能論でなく、こういった問題を含めた家族ついての議論を、保守を自称する人には、もっとしてもらいたいなと思います。
二流のソレだな(笑)
中学生の頃に読んだときには全く思いつきもしなかった視点です。もう一度読み返してみたくなりました。
死の五の理屈はいらねえんだよ!
まずは、お前が「変身」しろ!!
話はそれからだ!!!
カツトシの2ちゃんねる専用スレッド見たけど、あまり面白くなかった。こういうスレって本人が登場して色々と盛り上げる努力をするべきだと思う。ってかそうしなくちゃ最終的にカツトシは終わりだ。