先日、行われたチャンネル桜の討論で、経済評論家の三橋貴明さんが、現在の日本国内の一体どのような勢力が移民受け入れを推進しているのか?という問題について次のように言及していました。
保守という言葉の意味を狭義に限定していくことが混乱を招いた
日本でちょっと誤解があると思うのが、小泉さん的なのが保守と言われちゃうじゃないですか、あの人保守じゃないですよね。
でも、例えば保守論壇って言われる人たちも、グローバリズムとか新古典派的ないわゆるネオリベって言われるような人たちが保守って、そりゃアメリカではそうかもしれないけど、日本は違うと思うんですよね。で、私は、ちょっとこの問題は二つの側面があるなと(思っていて)、一つは移民を入れて外国人労働者を増やす目的で、労働市場の競争激化による実質賃金の低下、これが産業競争力会議とか、規制改革会議とか経済財政諮問会議の人たちがやりたいことなんですけど、もう一方の側面があって、多文化共生主義の実現と、要はお花畑的な「皆仲良くしましょう」「国境なんか、なくていいです。私地球市民です」みたいな方向もあるから、これまずいなぁと思うのが、このまま本当に外国人労働者を入れましょう、とか移民を入れましょうって話が本当に進んでいった場合は、グローバリストは賛成しますよと、で、多分、左翼と言われる人たちも賛成しちゃうんですよね。こうゆうの大好きでしょ彼ら。
だから、両方と相立たなくちゃいけない。これちょうどアレと似てるんですよ。都知事選の時に反原発について、細川さん小泉さん連合と宇都宮さん共産党連合ってのが出てきたのと同じで両方からやられてるんですよね。で、やられてるのが何かっていうと、ナショナリズムというか、ナショナルエコノミーというか国民経済的な人たち、これが本当の保守だと私は思うんですけど。
(『2/3【討論!】亡国への道か?『移民大量受入』と日本[桜H26/4/12]』 )
つまり、この移民問題の中には、いわゆるビジネス優先の自由主義経済を好む当時の右派と、多文化共生的なコスモポリタニズムを好む左派との連合と、ナショナルエコノミーを重視し、日本的なものを好む日本派との対立が表れているわけです。
しかし、現実にはこのような対立は、必ずしも近年に限ったことでないのは皆さんご承知の通りでしょう。移民問題や原発問題といった個別のイシューのみに関わる問題ではありません。例えば、2001年から2006年まで続いた小泉政権ですが、あの当時は郵政民営化や緊縮財政、タクシー業界や労働市場の規制緩和等の一連の政策群を称して小泉改革と呼ばれていましたが、当時はまさに、右派も左派も揃って小泉改革を賞賛していました。
特に保守派と呼ばれる面々はほとんど皆が当時の小泉改革を支持し、ビジネス優先の政策や格差拡大を懸念する一部の左翼と、利権を守ろうとする一部の業界団体や族議員の政治家のみが小泉改革に反対するような構図が生まれた結果、「小泉は改革派イコール国民を豊かにするチャレンジャーで、反改革派は自分たちの利権にしがみつく守旧派という対立構造を見事に演出してみせました。そして、ここでも自由主義経済を好む保守派と革新を好む左派とが連合を組み、当時としては本当に数少ない大企業や投資家ではなく、日本国民ひとりひとりの利益や日本の国体を守ろうとする日本派に攻撃を仕掛けました。そして、この時の状況から、思想的な転換をはかれないままに現在に至り、そして、当然の帰結として、現在においても移民問題や原発問題、あるいはTPPといった分野でこの構図が姿を現し、そして、おそらくは今後も道州制、経済特区といった議論において全く同じような状況が発生してくるでしょう。
もちろん、このような問題は、必ずしも日本のみに見られる問題ではないのです。新自由主義と保守派の結合は世界的に見られる傾向ですし、共産主義的な左翼は戦前からグローバリスト的な側面を強く有しています。しかし、やはりそのような問題とは別に、このように右派と左派が結託して様々な政策を進めていくような現象を生み出した日本固有の問題も存在します。このような問題に関する日本特有の事情についてはかつて中野剛志さんが討論番組の中で次のように解説しています。
司馬遼太郎は、さっきから出てるように左翼史観、マッカーサー史観に、すごくフィットするのですが、一方で、右派、保守派の人たちからも、すごくファンが多い。
何故か?簡単なんですよね。司馬遼太郎の言い方ってこうなんですよ。色々桎梏とか、悪い軍部とか、官僚とかあったのだけど、本当の日本人の歴史を調べるととても合理的だったんだ。明治とか戦国時代とか、そういう時ってのは、日本人の本当の合理性が出てきた時なのだ。何かが覆い被さっているから、本当の日本人の素晴らしさが出てないんだけど、それさえ取っ払えば良くなるのだ。構造改革と同じですよね?何かが邪魔をしている。誰かが、悪い既得権益を持っている構造があるから、それを取っ払えば本当の日本人は合理的に活動できるし、戦略的なのだ。
これは、非常に左翼的な考え方ですね?文化を背負っているから、それを取っ払えば合理的だ。でも、ここに保守系の人たちの、司馬遼太郎に惹き付けられる保守系の人たちの陥穽があるワケですよ。つまり「本来、日本人は合理的で素晴らしい歴史を持っていたのだ!!」この点に関して左翼の人たちと同じなんですね。従って、右も左も構造改革に賛成したってところがあると思うんですね。
(『3/3【討論!】戦後ニッポンか?日本か?戦後日本総決算![桜H23/12/31]』 )
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