財政赤字解消の特効薬は積極財政による景気回復

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筆者が何度も述べてきたことは、国の債務のGDP比を減らすには、積極財政で景気を回復させGDPを増やすしかないということだ。赤字国債を追加発行して国の借金が増えたとしても、すでに国の借金は1000兆円を超えており、増加率で考えればそれほど大きくない。一方GDPは国の借金の半分程度しかなく、増加率は大きい。だから債務のGDP比は積極財政で確実に減っていく。

ところで、最近のマスコミの論調を見ると、景気の落ち込みを防ぐための景気対策は仕方がないと認めるが、景気対策によって2020年度基礎的財政収支の黒字化は絶望的になったと主張する。これは経済を理解してない者の間違った論理だ。今、大型の景気対策をすれば、今年度の財政赤字を増やすが、その効果は景気回復となってその後の年度に反映するから、将来の財政赤字解消に貢献する。

これはマクロ計量モデルを使って試算をしてみれば分かることだ。減税や大型の財政出動を数年続けたとしよう。最初の2年、財政赤字は拡大するが、3年目には拡大は止まり4年目以降は逆に財政赤字は縮小していく。これはモデルによる試算の結果だ。景気対策をやれば景気は回復する。これは10.3兆円の景気対策を行った2013年度でも実証された。

しかし、景気対策は1年で終わり次年度は無謀にも消費増税を行い急激な景気悪化を招いた。このことから、「景気対策はカンフル剤のようなもので効果は一時的」と主張するのかもしれない。しかしそれは間違いであり、もし2014年度も増税など行わず、10兆円規模の景気対策を続けていたら、景気は回復軌道を歩み続け、経済は持続的に拡大し、税収は増え、デフレから脱却できていた。

景気対策を毎年続けるわけにいかないと主張する人がいる。それなら補正予算を本予算に組み込めば良いだけだ。そのためには、歳出を毎年何%かずつ確実に増やしていかなければならない。それなのに、最近歳出は増えておらず、その結果GDPも増えていない。もし安倍首相がGDP600兆円(つまり現在より20%増)を目指すなら、歳出も20%増やして本予算で120兆円程度にすべきだ。

歳出拡大はそれ自身で確実にGDPを増やす。それだけでなく経営者マインド、消費者マインド、投資家マインドを変え、動かなかった資金が一斉に動き出す。現在マネタリーベースは400兆円を超え、来年には500兆円を超す。使われない巨額の資金が金庫や日銀の口座で眠っている。企業の内部留保という形であったり、タンス預金であったりする。

デフレ脱却すれば、この資金が一斉に動き出す。資産インフレになる可能性もあるし、タンス預金を有効活用しようと動き出す。どのような動きであろうとそれは歳入の増加を意味する。そしてこの税収の増加は、上記の試算に入っていないから、予想以上の財政の改善となる。つまりマインドを変えることができるかどうかで、結果は天国と地獄だ。

もし、人が現在の不況はこのまま続くと考えると、節約ムードは続き、財政は改善しない。思い切った積極財政政策が国民のマインドを変えるほどのインパクトがあれば、人は節約をやめ消費は拡大し、それに応じて企業は設備投資を始める。動かなかった巨額の資金が一斉に動き出したら、財政赤字など吹っ飛んでしまう。天国と地獄、安倍首相はどちらを選択するのだろうか。

小野盛司

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