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大方の予想に反し国民投票で英国がEU離脱を決めた。英下院が設けたインターネットサイトには国民投票のやり直しを求める誓願署名が1時間で10万人の割合で増えているという。国民投票で離脱派の票は1741万票だったが、再投票を求める署名はそれを超えるかもしれない。移民排斥とか独立宣言とかで惑わされた英国国民には厳しい現実が見えてくる。株価暴落、ポンド暴落、英国国債の格下げ、海外企業が拠点を英国の外に移し、職が失われる。それだけでなく、スコットランドやロンドンが独立の動きを強めている。
国民投票も僅差でのEU離脱賛成だったから、ほぼ半数は反対だったわけだ。これから長い離脱交渉に移るが、その間に残留派が国民の多数を占めるようになる可能性は強い。議会は今でも残留派が多数を占めるわけで、新しい首相も残留派が選ばれたら、本当にEU離脱するのだろうかと疑問に思う。英国民が間違った情報の基に、間違った結論を出してしまい、それが二度と覆すことができないなどということがあるのだろうか。
これが対岸の火事とは思えない。24日の外国為替市場では円が一時1ドル99円まで急騰した。アベノミクス前の水準まで戻ってしまった。アベノミクスは3年半前に3本の矢で華々しくスタートし我々もそれを助けた。しかし、実際の中身は金融だけの1本の矢しか無かった。それも「異次元の金融緩和」という口先為替介入でしかなかったのではないか。金融緩和の規模で為替が決まるという数式を示す人もいたが、筆者はそれを信じなかった。
実際、金融緩和は進む一方なのに、対ドル円相場は金融緩和前の水準に戻ってしまったではないか。むしろこの一時的な円安は、原発の停止により原油の輸入が増え貿易赤字になった影響であり、それが原油の値下がりで赤字が解消されまた戻ったと考えた方が理解し易い。また円安が進めば輸出が伸び景気が回復するという意見にも同意できなかった。そもそも、日本経済はそれほど輸出に依存しておらず、円安になってもそれほどGDPは伸びないことは我々が行った試算でも明かになっており、13年前から我々はその試算を繰り返し説明してきた。
今こそ計量経済学に基づく試算結果を尊重し経済再生を目指すべきだ。我々は2003年に日経NEEDSを使い試算を行い、結論を出した。日本経済の再生には金融緩和をしながら行う大規模財政支出しかない。政府は10兆円超の景気対策を考えているようだが、今日の状況では、それ以上の規模で複数年続ける必要がある。我々の一貫した主張は、日本経済の復活に必要なのは2本の矢、つまり異次元の金融緩和と異次元の財政出動だ。
アベノミクスの3本目の矢である「民間投資を喚起する成長戦略」はこの2本の矢が放たれれば、間違いなく経済成長が始まるし、それによって民間投資は進む。NEEDSのシミュレーション結果を見れば、異次元金融緩和と消費増税の組合せでは景気回復は無理であることは明かだ。
今秋、もし十分な規模の財政出動が行われないなら、アベノミクスは完全な失敗に終わってしまう。ただし、そのことを国民が気付くまではまだ暫く時間が掛かるから今度の参議院選は与党が勝ちそうだ。改選となる議員は6年前、菅内閣の時選ばれた。当時民主党内閣は支持を失いつつあったとはいえ、それなりの議席を確保したが、今回民進党は国民に希望を持たせるような公約をしているように見えないから勝てない。3年前より安倍政権の支持率は落ちているので3年前より獲得議席はやや減るだろうが、6年前より大きく増える。
そう考えれば結果は次のように推察できる。自民は単独過半数を確保。与党全体では十議席以上増加、民進党敗北。
小野盛司
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