緊縮財政が原発事故の原因か?

緊縮財政が原発事故の原因か?

インターネット動画「チャンネルAjer」の収録を行いました。今回は「緊縮財政が原発事故の原因か?」というタイトルで、全体で約30分のプレゼンテーションです。
動画: 『緊縮財政が原発事故の原因か?①』島倉原 AJER2013.10.25(1)

何とも唐突なタイトルのようですが、

「緊縮財政がもたらした1990年代後半以降の日本経済の長期低迷が、電力会社の設備投資意欲を引下げて原発の安全性を低下させ、結果として東日本大震災における福島第1原発事故をもたらしたのではないか?」

という問題提起です。

今回はマクロ経済データの分析とは別に、主に下記の文献を参考にしました。

これらの文献からは、

  • 原発の信頼性を高めるために1975~85年にかけて実施された「改良標準化計画」によって向上した設備利用率(原発の稼働率)の維持自体が目的化し、定期検査短縮化や安全投資軽視の土壌が培われた。
  • 1990年代後半以降、電力需要停滞や電力自由化の動きに伴う不確実性増大を背景として、他の発電方法と比べてインフラコスト(初期投資コスト)が高い原発の安定成長が止まり、電力会社においては、原発関連への投資意欲が大幅に低下した。
  • 2000年代には原発事故の多発による全体的な設備利用率低下と石油価格高騰により、原発の設備利用率維持・向上が目的化し、安全対策工事を行う余裕が失われていた(中瀬(2011)では、新潟中越沖地震の影響で柏崎刈羽原発が停止していたことが、2009年当時に津波対策の必要性が指摘されていたにもかかわらず、東京電力が福島第1原発に何ら対策が施さなかった要因となっていたことが指摘されています)。

という状況が読み取れます。
他方で、下記の報道や報告書などからも、

「原発としては最も古い世代に属する福島第1原発の安全性に問題があることは認識されていたものの、その古さゆえに安全対策にもコストがかさむことから対策が放置され、今回の大惨事につながった」

という実態が読み取れます。

→ 次ページ:「電力需要の伸び悩みも緊縮財政と共に始まった」を読む

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西部邁

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  1. 2014年 7月 17日

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