緊縮財政が原発事故の原因か?

電力会社の誤った経営判断を誘発する、デフレ不況

こうなると下記に示した通り、

原発事故発生による原発稼働率の低下
⇒ 火力発電用化石燃料輸入による電力会社の損益悪化
⇒ 電力会社の投資余力低下による、原発安全性のより一層の低下
⇒ さらなる原発事故の発生

という悪循環にハマってしまい、福島第1原発の大惨事はその延長線上にあった、という構図が見えてきます(結果生じる電力料金引き上げが、電力自由化の議論を誘発してこの悪循環構造に拍車をかける、というオマケもついています)。

原発事故をもたらした、悪循環の構図

もちろん、原発の安全性確保を軽視し、目先の利益確保に追われた東京電力の経営姿勢そのものは、企業の社会的役割を見落としたものとして、容認されるべきではないでしょう(結果自らの存続を危うくしている以上、営利企業としても誤った経営判断をしている訳ですが…)。

しかしながら、こうした事態に至ったのは何も、

「東京電力関係者が悪人だったから」

ではなく、

「誤った経営判断を誘発する、人為的に作られたデフレ不況の環境があったから」
だということを、原発問題の議論に際して、冷静に認識すべきだと思います(したがって、「緊縮財政が続いているのは、財務省関係者が悪人だから」と言うつもりももちろんありませんが)。

さらに上記フローチャートにも示した通り、こうした悪循環の構図は、

「化石燃料輸入増による国全体としての経常収支の悪化」

という直接的、あるいは短期的な結果とは別に、

「電力会社の投資余力低下による原発以外の発電設備の生産性や安全性の低下、ひいては国全体の産業力の低下」

という間接的、あるいは中長期的な効果を通じて、国力低下や(経常収支の悪化を経た、本来の意味での)国家財政の破たんをもたらしかねない、というリスクをはらんでいます。これは、1990年代後半以降の公共事業の大幅削減が、公共インフラの劣化や建設産業の衰退をもたらしているのとほぼ同じ構図です。

→ 次ページ:「緊縮財政からの脱却こそ、今の日本が行うべき真の構造改革」を読む

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西部邁

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